歯医者に行くと、器具が口の中に入るたびに、どうしても「オエッ」となってしまい悩んでいる方はいませんか。今回は矯正歯科の場合でも、「オエッ」が起きやすい場面やその対策について詳しく解説いたします。

嘔吐反射とは?

口や喉の奥に何か異物が触れると、体が自然に「オエッ」となる反応のことを「嘔吐反射(おうとはんしゃ)」といいます。これは、体が異物や危険なものを飲み込まないように防御するための生理的な反応です。

普段は食べ物が喉の奥に触れたときや、歯ブラシで喉に近い部分を磨いたときに起こることが多いですが、敏感な人は歯科治療中にも出やすい方もあり、これが治療の際の不安やストレスの原因になることがあります。

嘔吐反射になりやすい人(嘔吐反射が強い人)はどんな人?

では、実際に嘔吐反射になりやすいのはどんな人でしょうか。大人と子どもでは、それぞれ嘔吐反射が起こる原因や頻度に違いがあります。

-大人の場合

◾️口腔感覚が敏感

口の中が特に敏感な人、例えば舌や喉の感覚が過敏な人は、嘔吐反射を感じやすいです。

◾️体位の変化に弱い

横になったり、口を大きく開けたりすることに苦手意識がある人も反射を感じやすいです。

◾️ストレスを感じやすい

日常生活でストレスを感じやすかったり、特に過去に苦しい歯科治療を経験してトラウマがある人は、不安感から嘔吐反射が強く出る傾向があります。

-子どもの場合

◾️未発達な消化器系

特に多い要因です。子どもは矯正治療の際には、消化器系が未発達のため嘔吐反射が起きやすく吐きやすい傾向にあります。

◾️不安や恐怖が強くある

初めての経験や不安が強い場合、特に嘔吐反射が強く出ることがあります。

◾️口腔感覚が敏感

お口の中が敏感で、特に歯磨きや食事の時に吐き気を感じる子どもは嘔吐反射が出やすいです。

◾️体位の変化に弱い

歯科治療や矯正以外でも、寝転んだりすることが苦手な子どもも、反射を感じやすい場合があります。

矯正歯科で嘔吐反射が起こりやすいのはどんな時?

嘔吐反射が普段から強めで、口の中に器具や材料が入る矯正歯科で、治療中に「オエッ」となる感覚が出やすいのはどんな場面でしょうか。

-型取りの時

スライムのようなアルジネートという印象材を使って型取りをする際に、特に嘔吐反射が強く出ることがあります。
※当院では、吐きやすいお子さんも口腔内スキャナーを用いて、型取りができます。ご安心ください。

-プレートタイプの矯正装置の装着時

拡大床や歯を動かした後に使用するリテーナー(保定装置)などを使用する際、粘膜にあたるプレートが喉の近くまで届く場合、装着時に反射が強くなることがあります。

-矯正器具の調整時

定期的に行われる矯正器具の調整時に、器具や水流が喉の奥に近づくことで嘔吐反射を起こすことがあります。歯のクリーニング時もに、 水や空気を使って歯を洗浄する時に反射が出やすい方もいらっしゃいます。

-X線撮影時

口腔内にX線フィルムやセンサーを挿入する場面でも、嘔吐反射が出やすいです。

これらの場面では、事前に歯科医師に相談していただければ、反射が出ないよう配慮をしてもらえます。オエッとなりやすくて、心配な方や、治療中が怖いお子様は事前に教えていただければと思います。

嘔吐反射の治し方はある?

嘔吐反射を完全に治すのは難しいですが、以下の方法で軽減することができます。

-鼻呼吸

嘔吐反射が強いときは、緊張が原因で呼吸が浅くなっていることが多いです。鼻から息を吸って口からゆっくり吐く深呼吸をすれば、心も落ち着き反射が和らぐはずです。

-感覚過敏を抑えるトレーニング

徐々に口の中に何かを入れるなど、舌や喉の感覚を少しずつ慣れさせるためのトレーニングを行うことで、反射を軽減することができます。

嘔吐反射が怖くて矯正歯科に行けない人はどうしたら良い?

嘔吐反射が強いと、歯科治療に対して大きな不安や恐怖を感じてしまうことがあります。 特に過去に「オエッ」となった経験があると、歯医者に行くこと自体がストレスになり、つい避けてしまうことも…。
そういった嘔吐反射が怖くて歯医者に行かない方に向けた対策を紹介します。

-口腔内スキャナーの利用

歯科医院で最も嘔吐反射が起こりやすい歯型とりですが、最近では、口腔内スキャナー(iTero element)
を用いて、型取りを行うことが一般的です。

子どもの患者さんも口腔内スキャナーで型取りができますので、嘔吐反射が心配な場合は事前にお伝えください。

-マウスピース矯正装置(インビザライン)を検討してみる

ワイヤー矯正と比較して、歯に透明なマウスピースを装着するだけのマウスピース矯正装置の方が嘔吐反射が出にくいと言われています。

調整の時間もワイヤーに比べ短い傾向にあるので、口内に異物の入る時間自体も短いといえます。また、取り外しが可能なので、もし辛くなった場合には一時的に外すことも可能です。

-事前に歯科医に相談する

嘔吐反射が起こるかもしれない不安がある方は、まず、問い合わせや初診相談の際に、嘔吐反射が強いことを事前に伝えるようにしましょう。必要に応じて反射が出にくいようにする方法があります。

安心してご来院いただき、少しでも快適に治療が進むようサポートいたします。美しい笑顔を手に入れるための第一歩を踏み出しましょう。