歯列矯正中で歯並びがだんだん整ってくると、今度は、上下の歯の正中のずれや、鼻と歯の真ん中が揃っていないことを気にされる患者さまが多くいらっしゃる傾向があります。

顔の正中とは

顔面正中、つまり顔の真ん中は、鼻の穴と穴の間にある境い目(鼻中隔)を指標としています。しかし、鼻中隔自体がずれている場合もあるので、その場合は、鼻中隔の下の上唇のくぼみ(人中)を顔面正中の基準とします。

-正中が揃っていることのメリット

顔の中心の縦軸(正中)が揃っていると顔が整ってみえます。正中を軸に左右対称な状態がバランスの取れている理想的なお顔です。

逆に正中がずれていると、顎や噛み合わせがずれている可能性があります。

このズレを放置していると、肩こりや頭痛、消化不良などの全身のゆがみにつながり、骨格のバランスを崩し、運動能力や発声にも悪影響を及ぼす可能性があると言われています。


顔や歯の正中が揃わない原因

-鼻が歪んでいる

鼻中隔がまっすぐではなく、歪んでいる状態を鼻中隔湾曲症といいます。改善するには耳鼻科で治療が必要です。

-左右の歯の大きさが違う

原則的には歯の大きさや本数は左右対称のはずですが、歯の大きさが解剖学的な平均サイズより小さい歯(矮小歯)や、永久歯が生まれつき足りない(先天性欠如歯)ことが原因で左右で異なるため、正中がずれることがあります。

-上下の顎の骨格の位置がずれている

歯が並ぶための大切な土台である顎の骨が歪んでいる場合、当然歯並びも左右対称にはならないので、歯の正中もずれます。

顎の歪みは、遺伝など生まれつき歪んでいる場合もあれば、頬杖をつく癖や左右どちらかの顎ばかりで噛むといった悪い習慣の積み重ねで骨格が変わってしまうこともあります。

歯列矯正で正中を整える方法

-左右の歯の本数や大きさを揃える

左右で歯の大きさや本数が違う場合、左右を均等にするために抜歯したり歯のやすりがけを行って正中を揃えます。

-下顎の歯を動かして上顎の正中に揃える

鼻と上顎の歯の正中は揃っているが下顎の正中がずれている場合は、下顎の歯をずらして上顎の正中に揃えていきます。

歯をずらすために必要なスペースの量によって、抜歯または歯のやすりがけを行いスペースを作り、歯を移動させます。

-上下顎の歯を動かして鼻の正中と合わせる

抜歯または歯のやすりがけを行い歯列ずらすために必要なスペースを確保し、上下の歯列をずらして、鼻の真ん中と合わせていきます。

スペースの確保が難しい場合は、必要に応じて、矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)を用いることもあります。

矯正用インプラント

歯の矯正をしたら正中がずれてきた

もともとは正中が揃っていたのに、歯列矯正を始めたら正中がずれてきたということがあります。

矯正治療中は正しいかみ合わせに導くために、いったん全ての歯を動かします。

その過程で、今まであたっていなかった上下の歯があたることがあり、下顎の位置が変化し、正中がずれることがあります。

今まで噛んでいた所と違う場所で噛んでいるような違和感はありませんか?

これは、矯正治療の過程で想定内のずれであり、最終的には上下の正中は揃うはずです。

しかし、正中のずれに違和感を感じたり、いつもと違う歯があたることで痛みを生じる場合はすぐに担当医に相談しましょう。

歯列矯正で正中が揃わないこともある

歯の大きさや欠損歯がある場合、かみ合わせの関係で、治療計画の時点で上下の歯の正中を合わせないこともあります。

歯科専門用語でスリーインサイザーといって、下顎の前歯が生まれつき3本しかない場合などは、正中を合わせることが難しいです。

スリーインサイザー

また、顎の骨格が左右に大きくずれていたり、鼻が曲がっている場合は、矯正歯科治療だけで正中を揃えることは困難です。

患者さまの治療に対する要望によっては、正中を一致させるためには、当院では行なっていない、外科手術を併用した、顎変形症という保険適応の歯科矯正が必要な場合もあります。

歯列矯正中に正中の位置が気になったら

とはいえ、完全に左右対称なお顔の人はめずらしく、顔の正中の認識は人によって個人差があります。

できれば、歯列矯正をはじめる前に、ご自身の顔や歯の正中の位置のゴールを担当医とよく確認してから治療を始めることが望ましいです。

しかし、治療中に少しでも違和感や不安を感じた場合は、遠慮なく早めに担当医に相談してくださいね。