歯列矯正で、顔の「人中」が短くなる方がいる一方で、「伸びた」「長くなった」と感じる方がいらっしゃるようです。また、初診カウンセリング時に「矯正で人中が伸びるって本当ですか?」と聞かれることも少なくありません。
歯の矯正で口元にどんな影響が出るのか、今回は「人中」についてお伝えします。
目次
そもそも「人中」とは?
人中とは、鼻の下、上唇の上の「みぞ」の部分になります。この部分は顔の中心に近く、よく動く口元に近いので、顔周りの印象にかなり作用します。
-「人中」の平均的な長さとは
頭の大きさは個人差があるものの、日本人の人中の平均的な長さ(人中の起点にメジャーを当て、上唇の山のくぼみまでの長さ)は約1.5cmとされています。
いわゆる「長い」とされるのは2cm以上です。
ちなみに、お顔が美しく見える口元の黄金比として、鼻~口(人中):口~顎先が1:2となるのが理想的であると言われています。
では、なぜそもそも人中が長いと困る人が多いのでしょうか。それは先に挙げたように、口周りの印象が顔の見た目印象に強く影響をするからです。
①顔が平面的で長く見える(面長)
人中が長いと、その分顔のパーツが広がって見えるため、全体としてのっぺりとした面長に見えやすくなります。
②老けて見える
人は年をとると、自然と皮膚が下がり、人中も伸びてきます。その印象が無意識に働き、人中が長い→老けた人という印象を与えがちになります。
③口元が強調される
鼻の下から上唇までの距離が長くなることで、顔の下半分の割合が大きくなり、口元に目がいきやすくなります。出っ歯など歯並びに不安がある場合、より口元が目立ってしまうことになります。
-人中が長くなる原因
このように、人中が顔の見た目に影響を与えやすいため、最近では人中を短く見せ、小顔に見せるようなメイクも流行っているようです。
では、人中はなぜ長くなってしまうのでしょうか。その原因も様々です。
①遺伝
顔のパーツの中でも遺伝要素が大きいと言われているのが鼻の高さ、唇の形、輪郭の3つと言われています。
そのため、親族に人中が長い方がいた場合は、骨格からの遺伝による可能性が考えられます。
②歯並び
上の前歯が前方に突出している「上顎前突」いわゆる出っ歯の歯並びの方は、上顎や前歯が前方に突き出てしまい、鼻の下の皮膚が引っ張られて人中が長く見えている状態となります。
③表情筋の衰え・退化
私たちの顔には目や鼻、口などを動かすために30種類以上の筋肉が存在しています。
しかし、表情筋は日常生活の中で30%程度しか使われておらず、加齢や生活習慣によって衰えやすい筋肉と言われています。
特に口周りの筋肉が衰えると、たるみやしわが目立つようになり、人中も伸びたように見えてしまいます。
歯列矯正中の方にも、歯並びが整うにつれて、貼りだした歯が引っ込むことで、下がった分口周りの肉がたるんでしまい、対策せずにでそのまま老け印象になってしまうこともあります。
④噛み癖
無意識でやってしまう、唇の噛み癖です。頑張っている人ほど唇を内側に巻きみやすい傾向にあるので気をつけましょう。
また、歯並びが気になる方も、隠そうとして無意識に唇を噛んでしまい、人中が物理的に伸ばされてしまうこともあります。
歯列矯正で人中は長くなる?短くなる?
成人すると、歯列矯正したからといって、この部分の骨格が勝手に伸びたり縮んだりすることはなく、長さが変化することはありません。それでも歯列矯正で人中が短くなったり、長くなると感じるのはなぜでしょうか。
-歯列矯正で人中が長くなる場合
–矯正装置により口元にボリュームが出る
矯正期間限定ですが、表側ワイヤー矯正の場合、装置を歯の表面につけるために、その厚み分口周りが外に広がり、人中も広がって見えてしまうことがあります。一時的なため、治療が終わり装置が外れると、人中の長さももとに戻ります。
–表情筋の衰え
矯正期間は歯の痛みのために柔らかいものをよく食べるようになったり、ワイヤー矯正の方であれば装置が目立つことを嫌い、口周りをあまり動かさない方もいらっしゃいます。
そのため、咀嚼筋や表情筋が衰え、人中も伸びやすくなる場合もあります。
その場合には表情筋トレーニングやマッサージなどで適切なケアを行えば、防ぐことができるでしょう。
–上顎前突(口ゴボ)が改善されたため
出っ歯の方が矯正で歯が適切な位置に移動し口周りの突出感がなくなったことで、今まで引っ張られていた皮膚が緩み、結果として人中が伸びてしまう可能性もあります。
しかしこの場合、人中だけを見ると長くなったように感じるかもしれませんが、横から見た時、口元の突出感はなくなり、Eライン(横顔の美しさの指標)上におさまっており、お顔全体で見た時のバランスは整っているはずです。
人間の皮膚なので、成人すると人中の部分が勝手に伸びたり縮んだりすることはなく、見え方によって人中の長さが変化しています。
【関連ブログ】矯正治療をしたら、鼻の下が伸びる?【人中伸びた?】
–適応症例でない非抜歯矯正や部分矯正
ガタガタや歯列から飛び出てしまった歯を綺麗に並べるためにはスペースが必要です。
スペースを確保するには、歯の横の面を削ったり、歯のアーチを広げたり、奥歯を後ろに移動したりと、様々な方法があります。
しかしながら、歯列全体を移動する必要があったり、抜歯をしないと歯を並べるためのスペースが足りない症例の場合、部分矯正や歯を抜かない矯正は適した治療方法ではありません。
にもかかわらず、費用や治療期間が短いというメリットを優先して部分矯正や非抜歯矯正を選択した場合、前方に歯列を広げるしかありません。
結果として、正面から見た歯並びは綺麗になっても、口を閉じると口周りがもっさりした印象のロゴボ状態となり、引っ張られた人中が伸びたように見えることとなります。
-歯列矯正で人中が短くなる場合
歯列矯正で人中が短くなった症例を紹介します。
–出っ歯の改善
- 主訴:口元が出ている
- 診断名:上下顎前突
- 初診時年齢:20歳
- 治療装置:表側矯正(ワイヤー矯正)・矯正用アンカースクリュー
- 治療期間:2年6ヶ月
- 費用:968,000円(税込)
- リスクと副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り
この患者さまは、意識しないと口を閉じても歯が見えている状態でした。
歯列矯正で前歯が後ろに下がり、唇に力を入れなくとも自然に口が閉じられるようになります。結果的に、鼻の下が引っ張られることがなくなり、「人中」が短くなったように感じさせます。
人中を短くする方法
歯列矯正以外で人中を短く見せるにはどのような手段があるでしょうか。
一般的には「メイク」「顔トレ」「美容整形」などが挙げられます。
-「化粧」で人中を短く見せる
メイクで人中の長さの印象を変えることができます。「小顔メイク」や「人中短縮メイク」という名称で呼ばれ20〜30代に流行っているくらいです。少しでも小顔印象に近づきたいですよね…。
唇や人中の印象を変えるためには、そのパーツだけでなく顔全体のファンデーションの色を細かく変えたり、シェードを入れたりなど工夫が必要となります。
「整形メイク」「ワンホンメイク」などとも言われ、ネットを検索すると色々参考になります。
-「顔トレ」で人中を短く見せる
表情筋のたるみや衰えの自覚がある場合には、表情筋トレーニング、いわゆる「顔トレ」で口周りの印象を変えることができます。歯科医や整体師の考案のものもありますし、顔ヨガなど昔からあるものもあります。
VoCE 自力で人中を短くする方法|整形級のトレーニングを紹介【歯科医監修】
anan beauty+ 気になる“人中”を短縮!【小顔管理士直伝】1日2分でできる「すっきり顔トレ
-「美容整形」で人中を短くする
美容整形の場合、外科手術を必要としない「唇ヒアルロン酸注射」「人中短縮ボトックス注射」によるものと、メスを入れる「人中短縮手術」などが一般的です。
「唇ヒアルロン酸注射」は、唇にヒアルロン酸やボトックスを注射することで、唇のボリュームを増やすことで人中を短くし、「人中短縮ボトックス注射」はボトックスを人中に注射することで短くする方法です。双方とも施術効果は3か月〜半年程度と一時的なものとなります。
「人中短縮手術」は、鼻の下部分を切開し、人中が短くなるよう縫合する方法です。物理的に短くなり、効果も永続的ではありますが、一方で切開をしてしまうため、印象がイメージと違った場合にも、元に戻すことはできません。
また、口周りの癖で顎に梅干し皺がある人には、この手術が向かない、といった説もあります。
リゾナスフェイスクリニック東京
「【超危険!?】人中短縮で口が閉じないくなってしまう方の特徴を徹底解説!!」
歯列矯正で後悔しないようにするには
歯列矯正で実際の人中の長さは変わりませんが、見え方によって長くなったり、短くなったように感じることは事実です。
歯列矯正で変化するのは歯並びだけではありません。口元の印象も変化します。
そのため、治療を始める前に、矯正の方法や期間だけではなく治療後の口元への影響を相談できる歯科医院で歯列矯正を行うことが大切です。
大宮SHIN矯正歯科では、治療を始める前に患者さまと矯正を行う歯科医師との間で、治療後の歯並びと口元の明確なイメージを共有することが重要であると考えています。
頭蓋骨のセファロや歯のレントゲン、歯型のデータなど精密検査時に採得した、患者様の詳細な情報をもとに、歯並びやかみ合わせのシミュレーションだけでなく、治療後の口元の変化を視覚化することも可能です。
歯列矯正を検討しているけれど、人中のリスクが気になる、という方はぜひ一度初診カウンセリングへ相談にいらしてください。