子どものマウスピース型矯正装置は、機能型装置とも呼ばれたりします。大人用のマウスピース型矯正装置の目的は歯並びを整えていくことですが、子どものマウスピース型矯正装置は、歯並びよりも口腔周囲機能訓練に重点を置き、成長過程における口腔機能の向上を目指します。
子どものマウスピース型矯正装置の目的
マウスピースによって口腔周囲筋にアプローチすることで、今後生えてくる永久歯を正しい位置に導くこと、また咬み合わせの安定を図ること、口腔周囲の間違った習癖を改善させることができます。
小児時期に、舌の位置が間違った位置にあったり、鼻ではなく口で呼吸を行う口呼吸の習慣、口腔周囲の間違った習癖などがあると、それに合わせて顔の筋肉も発達してしまいます。それらを放置すると顔の筋肉だけでなく歯並びや咬み合わせにも悪影響を及ぼしてしまうので、小児のうちからそれらを改善させ、正しい顔の発育や正常な歯並びを目指すことが子供のマウスピース型矯正装置の目的です。
マウスピース型矯正装置の種類
子どものマウスピース型矯正装置は、目的に合わせてさまざまな種類があります。
プレオルソ
プレオルソは適応症例に合わせ、タイプが分かれます。Type-1は出っ歯(上顎前突(じょうがくぜんとつ))や咬み合わせが深い(過蓋咬合(かがいこうごう))場合に使用されます。
Type-2は前歯が咬み合わない(開咬(かいこう))の場合に使用されます。
Type-3は反対の咬み合わせ(反対咬合)の場合に使用されます。
T4K(ティーフォーケー)
T4Kは「TRAINER FOR KIDZ」の頭文字をとったものです。主にこの装置では口腔筋のトレーニングをすることが目的です。変な癖がついてしまった舌の位置や、口呼吸、舌の突き出しなどの悪い癖を直し、正常な顔と顎の発育、正常な歯列の発達を促します。
継続したトレーニングを行うことで正しい歯と顎の位置付けができます。T4Kは、“永久歯が生えてくる子供の成長段階”に使用することで、歯並びを整えることができます。1日1時間以上はT4Kを装着し、トレーニングを行います。就寝時にも装着することで口呼吸の改善に繋がります。
バイオネーター
バイオネーターはマウスピース型とは少し形態が異なりますが、こちらも取り外しができる装置で、筋肉の動きを利用して下顎の骨の成長を前方へと促します。主に使用される症例は上顎前突(出っ歯)と診断された場合ですが、下顎前突(かがくぜんとつ)と呼ばれる受け口、過蓋咬合(かがいこうごう)(咬み合わせが非常に深い状態)の場合にも使用されることがあります。
下顎の成長を促すための装置なので、適応症例は下顎の成長が遅いと診断された場合です。使用時間は1日10時間以上ですので、就寝時や在宅中に使用されることが多いです。バイオネーターは装着時の違和感が大きく、最初のうちは慣れるまで大変ですが2週間ほどで慣れてくるのでそれまでは頑張って使用を続けましょう。
マウスピース型矯正装置の注意点
子どものマウスピース型矯正装置において最も注意すべきことは“お子さまが装置を入れていないと治療が進まない”という点です。メリットは取り外しができるため、食事や歯磨きの際に装置がストレスにならずに普段通り行えますが、反対に取り外しができるせいでお子さまが自分で装置を外してしまう可能性があります。
最初は装置の違和感や痛み、喋りにくさ等から、全く装置を付けたがらないお子さまも大勢いらっしゃいます。小児矯正は大部分が親御さん発信ですので、お子さまがなぜ今この装置が必要なのか、を理解していないと治療を行うのが非常に難しいです。
最後に
小児矯正は、生涯の歯並びを保証するものではありません。子どもはまだ成長期ですので、骨や筋肉もこれからどんどん成長していきますし、歯も生え変わります。そこで、成長期であるからこそマウスピース型矯正装置によってより正常な筋肉、歯並びへと導く手助けをすることができるのです。
ただし、マウスピース型矯正装置は取り外しができるため、装置を外している間は矯正力がかかりません。積極的に骨にアプローチしたい場合などは、取り外しができるマウスピース型よりも取り外しのできない固定式の装置の方が適しています。
お子さまが、一体どのような状態で何を目的として矯正治療が必要なのかを親御さんがしっかりと理解し、お子さまにもその治療が必要なのかを理解して協力してもらうことで小児矯正は治療をスムーズに進めていくことができます。
子供の歯の矯正 失敗しないために①