
開咬(オープンバイト)は、矯正後に後戻りしやすい歯並びのひとつです。
特に舌癖や保定装置の装着不足が原因で、数年後に再発してしまうケースも少なくありません。
この記事では、実際の症例を交えながら後戻りの原因や対策についてわかりやすく解説します。
目次
開咬とはどんな歯並び?患者さまの症例から
開咬(かいこう)とは、奥歯はしっかりかみ合っているのに、前歯が閉じずに隙間が空いている状態を指します。「オープンバイト」とも呼ばれ、見た目だけでなく、発音や食べ物をかみ切る力にも影響します。

この画像は、 29歳・女性の患者さまの歯並びです。
矯正治療後の後戻りが気になるということでご来院されました。
約10年前に他の歯科医院で、歯を4本(上下左右1本ずつ)抜歯してワイヤー矯正を行いましたが、治療後5~8年で前歯が再びかみ合わなくなってしまったそうです。
「後戻り」はなぜ起こる?開咬と舌癖の関係
1. 開咬は後戻りしやすい歯並び
開咬の歯並びは、舌が常に前歯と前歯の間に入り込む舌突出癖が原因で起こりやすく、そのため、矯正後もその癖が残っていると再び歯が開いてしまうリスクが高いのです。
2. 保定装置(リテーナー)を怠ると再発しやすい
矯正後の歯は不安定な状態なので、少なくとも2~3年、場合によってはそれ以上の保定装着が必要です。保定装置の装着不足は最も後戻り原因として多く挙げられています。

この患者さまの場合も舌癖と保定装着の装着の怠りが後戻りに影響したと考えられます。
開咬の後戻りを防止する3つの方法
保定装置(リテーナー)を正しく使う
- 装着期間:動的治療と同じく最低2〜3年
- 着用時間:初期は20~22時間(食事と歯磨きの時間以外は装着)、その後は次第に時間を減らしていき就寝時のみ継続
矯正治療後の保定期間について詳しくはこちら
舌癖を改善する(MFT・筋機能療法)
- 舌を上あごに付ける練習、正しい飲み込み、ストロー訓練など
- 日々のMFTにより舌の位置を修正し、舌が前歯を押す力を抑える
舌癖を防ぐ保定装置を選択する
- タングクリブ付きリテーナー:舌を前に出すことが出来ないガード付きのリテーナー。舌の誤った動きを防ぎやすい
- 固定式リテーナー:舌癖に左右されづらく効果的。


開咬の歯並びの後戻りを防ぐためにできること
- 保定装置をサボらず装着:最低2〜3年継続
- 舌癖セルフチェックを習慣化
- MFTトレーニングを取り入れる
- 保定後の定期検診:舌癖と保定状態を矯正歯科で確認
- 再治療を恐れずに相談を:後戻りの初期段階で部分治療が可能
開咬の後戻り矯正治療のながれ

この患者さまは歯磨きがしやすく、見た目も気にならないマウスピース矯正装置(インビザライン)で再治療を希望していました。
しかし、10年前にワイヤー矯正で通っていた歯科医院では再度ワイヤー矯正で治療することを勧められ、当院に来院されました。
第1ステージ
10日〜1週間ごとに新しいマウスピースに交換し、約1年で37枚のマウスピースを使用しました。

こちらが1回目のマウスピースを使い終わった時のお口の中の状態です。
全体的に並びも良くなり、前歯もかんできましたが、左上の1番目の歯のねじれが少し残ってしまいました(写真2)。
奥歯のかみ合わせも、まだ十分にかんでいないようです(写真1・3)。そのため、リファイメント(仕上げ用の追加マウスピース)を作成し、細かい所を調整を行うことにしました。
第2ステージ
2回目のマウスピースは全部で15枚でした。今回は1週間交換で進めて、約4ヶ月で使い終わりました。
動的治療終了
この患者さまは、マウスピースの使用方法や装着時間をしっかり守ってくださったので、マウスピースを作り直す回数は1回だけで、約1年6ヶ月で動的治療が終了しました。

こちらが第2ステージが終了した際のお口の中の状態です。

前歯がしっかりとかみ合っており、開咬が改善されました!第1ステージで並びきらなかった上の前歯のねじれもなくなり、正中(上下の歯の中心)が揃った美しい歯並びです。

横から見ても、前歯がしっかりとかみ合い出っ歯も改善されています。奥歯のかみ合わせも第2ステージでしっかりかむようになりました。
保定期間
開咬の後戻りには舌癖が深く関与するので、舌癖防止用のタングリブリテーナーを使用し、マウスピースと同じように装着時間を守っていただくようお伝えしました。
また、舌癖防止と歯並びの安定を目的としたMFT(口腔筋機能トレーニング)も行いました。

症例詳細
主訴:前歯がかみ合わない
診断名:開咬
初診時年齢:29歳
装置名:マウスピース型矯正装置(インビザライン )
抜歯部位:上下左右第一小臼歯を抜歯済
治療期間:1年6ヶ月
費用:747,000円(税込821,700円)
リスク・副作用:副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り
最後に
矯正治療後も定期的なチェックによって、理想の歯並びを末永くキープし後戻りを防ぐことができます。「せっかく矯正したのに戻ってしまった…」とお悩みの方は、早めに治療してもらった歯科医院または、通いやすい矯正歯科に相談しましょう。
気になることがあれば、当院の初診カウンセリングもぜひご利用ください。