「朝起きると顎が疲れている」「歯がすり減っている気がする」——そんな方は、歯ぎしり(グラインディング)や食いしばり(クレンチング)の癖があるかもしれません。
これらは「ブラキシズム」と呼ばれ、放置すると歯や顎、筋肉に負担をかける原因になります。
中には「歯ぎしりがあるけど矯正できるの?」「歯ぎしり用のマウスピースと矯正用のマウスピースは何が違うの?」と疑問を感じる方も多いでしょう。
ここでは、歯ぎしり・食いしばりと矯正治療の関係を、わかりやすく解説します。
目次
歯ぎしり・食いしばりの原因とリスク

主な原因
歯ぎしりや食いしばりの原因は一つではありません。
代表的な要因には次のようなものがあります。
- 精神的ストレスや緊張
- 集中時の無意識な噛みしめ
- 睡眠の質の低下
- 噛み合わせの不調や歯並びのズレ
特に、噛み合わせのずれがあると、歯が本来の接触点で当たらず、一部の歯や筋肉に過剰な負担がかかることがあります。
リスクと見た目への影響
歯ぎしり・食いしばりが続くと、以下のようなトラブルが起こりやすくなります。
- 歯のすり減り・欠け・破折
- 顎関節症(顎の痛み・音が鳴るなど)
- 知覚過敏
- 肩こり・頭痛
- 咬筋(噛む筋肉)の発達によるエラ張り
また、噛み合わせが深い「過蓋咬合(かがいこうごう)」の方は、もともと歯ぎしりや食いしばりが起こりやすい傾向があります。

歯ぎしり・食いしばりは矯正で改善できる?
矯正治療の目的は、見た目を整えるだけでなく、機能的な噛み合わせをつくることにあります。
歯が正しい位置に並ぶことで、噛む力が均等に分散し、特定の歯に過剰な負担がかかりにくくなります。その結果、次のような効果が期待できます。
- 歯の摩耗や欠けを防ぐ
- 顎関節への負担を軽減する
- 筋肉の緊張を緩和する
矯正治療で「歯ぎしりが完全になくなる」ことは難しいかもしれませんが、歯や顎にかかる負担を減らし、長期的に歯を守ることができます。
歯ぎしりが強い人におすすめの矯正装置・対応法
歯ぎしりが強い方でも、矯正治療は十分可能です。
ただし、症状に応じて装置の選択や補助的な対策が必要になります。
- マウスピース矯正装置(インビザラインなど)
→ 歯を覆う構造のため、歯の保護効果も高い
→ すり減っても定期的に新しい装置に交換できる - ワイヤー矯正+咬合面カバー
→ 咬合面を保護する素材を併用して、歯への負担を軽減できる - 歯ぎしり・食いしばりのリハビリ指導(MFT)
→ 日中の噛みしめ癖を改善し、筋肉バランスを整えることで顎の負担を減らす
矯正中に歯ぎしり・食いしばりがある人が注意すべきこと
矯正中は歯が少しずつ動いているため、一時的にかみ合わせが不安定になり、歯ぎしりや食いしばりが一時的に強く出ることがあります。このような場合には、以下の点に注意しましょう。
- 痛みや違和感を我慢せず、歯科医に伝える
- 睡眠環境を整え、ストレスを軽減する
- 顎や首周りのストレッチで筋肉をリラックスさせる
治療が進むにつれて、かみ合わせが安定してくると症状が軽減することがほとんどです。
歯ぎしり用マウスピースと矯正用マウスピースの違い
「歯ぎしり用のマウスピースと矯正用マウスピースは同じですか?」という質問をよくいただきます。目的や使用方法が異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。

軽度の歯ぎしりであれば、矯正用マウスピースがナイトガードの役割を兼ねることも可能です。ただし、強い歯ぎしりの方は、装置のすり減りや破損を防ぐために歯科医の管理が必要です。
矯正後のリテーナー(保定装置)と歯の保護
矯正後の歯並びを安定させるために使用する「リテーナー(保定用マウスピース)」は、歯ぎしりや食いしばりによる摩耗から歯を守る役割もあります。
矯正によって歯並びと噛み合わせが整うと、同じ歯ぎしりでも歯へのダメージが大幅に軽減されます。そのため、矯正後もリテーナーを継続して使用することが、歯の長期的な保護につながります。
まとめ
歯ぎしり・食いしばりがあるからといって、矯正を諦める必要はありません。むしろ、歯ぎしり・食いしばりがある人こそ、かみ合わせを整える矯正治療がおすすめです。
- 歯ぎしり・食いしばりの原因には、ストレスだけでなく噛み合わせの問題も関係する
- 矯正でかみ合わせを整えることで、歯や顎へのダメージを軽減できる
- 矯正中の一時的な歯ぎしりは自然な反応。医師の指導で安全に進められる
- マウスピース矯正装置は軽度の歯ぎしりにも対応可能
- 矯正後のリテーナーは、歯の保護にも有効
正しい診断と治療計画のもとで行えば、矯正は「歯を動かす治療」だけでなく、「歯を守る治療」にもなります。気になる症状がある場合は、矯正専門医に一度ご相談ください。


