歯並びがいいけど口ゴボとは

-口ゴボとは

『口ゴボ』とは、ネットで突如現れた言葉です。唇を閉じた状態で、横から見たときに口元がポコッと盛り上がっていることを示します。矯正歯科専門用語では、それを『口元の突出感』といいます。


お顔を横から見た時に、鼻先と顎先を結んだ線をEラインと呼び、口元の美しさの基準のひとつとしています。Eラインの内側に口元が収まっている状態が、理想的な横顔とされています。

しかしながら、Eラインから上唇・下唇が出ている状態の口ゴボは、まさに理想的な横顔とは間逆の口元です。

芸能人の分かりやすい例を挙げますと、2022年のM-1王者のウエストランドの井口さん、青春の光の森田さん、大久保佳代子さんのような口元となります。

-口ゴボの確認方法

口ゴボかどうか確認するには、人差し指を鼻先と顎先に当てる方法があります。 人差し指を鼻先と顎先に当てたときに口元が人差し指で押し潰されるような場合、口ゴボの可能性があります

口ゴボの方は、ぱっと見、ガタガタが少なく歯並びがきれいなのに、この方法で確認すると口ゴボであることに気づく方もいます。

歯並びはいいけど口ゴボ

歯並びはいいのに口ゴボになる原因

『口ゴボ』は、ガタガタ(叢生)など不正咬合と呼ばれる歯並びが原因の場合もありますが、歯並びが良くても口ゴボの人はいます。

正面から見た歯並びは良くても、歯の傾きや骨格によって顔の見え方が変わるからです。上の前歯・下の前歯が顎に並びきらず前にせり出し、それによって唇がつられて前に出てしまうことで口ゴボになります。

顎が小さいのに、一般的な歯の大きさで先天的な欠損歯などもない場合、縦長の歯列弓(歯列のアーチ)になっています。これが口元の突出感、いわゆる口ゴボの原因です。

他には口呼吸が原因で、口周りの筋力が衰え口ゴボとなることもあります。

口ゴボの治し方

口ゴボを治すには、口ゴボの内容や程度にもよりますが、「歯列矯正」か「外科手術」が主な選択肢となります。

ではその口ゴボに対して、矯正治療はどのようにアプローチしていくのでしょうか?

-歯列矯正

歯列矯正では抜歯することで、抜いた歯のスペース分、前歯と歯ぐきを骨ごと後ろに移動させて口や顎の突出をなくすという方法で重度な口ゴボにも対応はできます。

まずは、初診時に口の中のお写真・お顔のお写真を撮影し、カウンセリングを行います。

患者さまが一番気にしていらっしゃる部分はどこか?歯並びか?口元全体の様子か?また、ものを食べる上で困っていらっしゃることはないか?など細かく聞いてまいります。

ロゴボの多くは顎の大きさに対して全ての歯が収まらないことが原因となります。

歯列矯正の場合、口元の突出感を改善するには、歯を抜いてスペースを作り、そのスペースを利用して前歯を後ろに引き下げることで行います。

カウンセリングの次に、精密検査を行ったうえで治療に進みます。精密検査では、歯型をお取りしたり、口のレントゲン・お顔のレントゲンを撮影いたします。

この精密検査が、口ゴボの原因を判断するのに特に重要になってまいります。歯型やレントゲンの資料をもとに、歯を抜く必要があるかどうかが決まります。

–矯正治療における抜歯の考え方

口元の突出感、いわゆる『口ゴボ』を改善するためには、抜歯が必要になる症例が多くみられます。健康な歯を抜くことに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。

矯正治療における抜歯は、電車の横並びの座席を例に挙げるとわかりやすいです。

例えば、3人掛けの椅子があるとします。

そこに4人が無理やり座ろうとすると、1人は前に乗り出して座らなければならないですよね?

席にきちんと座っていただくためには、やはり1人どいていただく必要性があります。

この1人にどいていいただく=抜歯、というような考え方かな、と思います。

顎の中に位置よく前歯が収まってもらうためには、やはり歯を何本か抜く必要性があります。

抜いたスペースを使って前歯を後ろに引き下げることで、唇の位置もあわせて後ろに引き下がるというわけです。

–口ゴボの人におすすめの矯正装置

ガタガタがない、もしくは少なく、歯並びはいいけれど、口ゴボという方におすすめの矯正装置はワイヤー矯正です。

歯並び自体はきれいなので、ほとんどが横から見た口元の印象の改善を矯正治療に求められることかと思います。

口元の突出感をなくすには、歯を抜いてスペースを作り、そのスペースを利用して前歯を後ろに引き下げることで行います。

その場合、とても大きなスペースを、えいや!と引っ張ってくる必要性があるためワイヤー矯正でしっかりとコントロールした方がおすすめなのです。

治療中の見た目が気になってしまう方は、歯の色に近いホワイトワイヤーを選ぶこともできます。当院の場合ブラケットは目立ちにくい透明なものを利用しています。

どうしても、マウスピース型矯正装置(インビザライン)がよいという場合は、大きく歯を移動する間はワイヤー矯正を用い、その後の微調整はマウスピースで行うといった装置の併用も可能です。

ちなみに、森田さんは現在矯正治療中との発表があったばかりですが、彼はそのキャラクターを生かすべく『口元の突出感を残したままでガタガタ(叢生)をとる』というような治療をしているようです。

もちろん、お顔立ちはその人の個性です。

ですが、口元の突出感を含めたお顔立ちの変化も矯正治療で期待できます。

-外科手術

顎の骨格自体に問題がある口ゴボの場合、外科手術を伴う保険適応の歯科矯正または美容整形で口元の印象を改善する方法もあります。その場合は別名「上顎および下顎の分節骨切り術」などとも呼ばれるセットバックという手術が行われます。

しかし、外科手術で口ゴボを治療する場合は、かなり大掛かりな手術となりますので、後遺症が残るリスクや、長期にわたって痛み・腫れが伴うほか、入院が必要になります。

また外科手術は全身麻酔で行い、術後の吐き気や頭痛、神経麻痺など、軽微なものから重篤なものまで複数のリスクがあります。

さらに、仕上がりを確認しながら施術を進めることができないため、担当医師に任せきりになり、理想の仕上がりを目指すのが難しい可能性もあります。