〈ドライソケットとは〉

ドライソケットとは、抜歯後に生じる口腔の合併症の一つです。 特に親知らず(智歯)の歯を抜いた後に起こることが多いです。

通常、抜歯後の穴には血液が溜まり、表面が乾いてかさぶた状になった後、徐々に組織化していき血餅となりますが、血餅はしっかりと付着しているわけではないため、気になるからといって指や舌、歯ブラシなどで触ると簡単に動いてしまいます。

この血餅が取れると抜歯した穴から白い骨が見えたままとなり、激しい痛みを伴います。これを“ドライソケット”と言います。

名前の通り抜歯した穴に血液が満たされず、穴が乾いてしまっている状態となり、骨が空気と触れている状態になり、疼痛や感染を引き起こします。

ドライソケット

・ドライソケットの見た目

抜歯後の穴がぷにぷにの血餅で塞がっておらず、傷口がむき出しの状態です。

抜歯部位が大きく開いた状態で、赤く腫れたり、歯茎が炎症を起こしているように見えることがあります。直接白い顎の骨が一部露出していることもあります。

また、口内の細菌が繁殖しやすい状態のため、不快な臭いや味がすることもあります。

〈ドライソケットの痛み〉

・ドライソケットになるとどんな痛み?

通常、抜歯直後の痛みのピークを迎えた後、徐々に痛みは治まるものですが、反対に徐々に強くなるとドライソケットの可能性が高まります。


ドライソケットになると、抜歯直後の痛みより激しい疼痛が継続的に続きます。細菌感染による炎症から、抜歯部周辺が激しく腫れたり、口の中で不快で異常な味がすることもあります。

・痛みの期間

個人差はありますが、激しい痛みが1週間以上~場合によっては一か月続くこともあります。

〈ドライソケットにならないために抜歯後にしてはいけないこと〉

個人差はありますが、抜歯後の次のような行動でドライソケットになりやすくなることがあります。

・強くうがいをする

強いうがいを頻繁に行うことで、抜歯後の穴を塞ぐはずだった血餅になる血を洗い流してしまったり、せっかくの血餅が外れてしまい、ドライソケットになってしまうためです。

抜歯後にやってはいけないこと

・傷口を触る

抜歯後の穴が気になり、舌や指などで触ることで、せっかくの血餅が外れる上に、細菌感染を引き起こし、出血や強烈な腫れ・痛みなどを引き起こしてしまいます。

抜歯後にやってはいけないこと

・飲酒・長風呂・激しい運動

血流がよくなることで、血が固まりにくくなり、抜歯後の穴を塞ぐ血が固まってできる血餅の完成が遅くなり、ドライソケットのリスクが高まります。

・喫煙

タバコの成分によって血流が悪化するので、血餅を作るための血が足りなくなることがあります。結果、ドライソケットのリスクが高まる可能性があります。

・歯磨き

口の中を清潔に保つために歯磨きをすることは良いのですが、抜歯後の穴をしつこくブラッシングすると、血餅がはがれてしまうリスクが高まります。

抜歯後にやってはいけないこと

〈ドライソケットの治療法〉

それでもドラソケットになってしまった時はどうしたらよいのでしょうか。

・病院で治してもらう方法

抜歯をした歯科医院に連絡をして、ドライソケットの治療を行います。

一般的な手順としては
①まず、抜歯後の穴に食べカスなどが入り、不衛生になっていることがあるので、生理食塩水や次亜塩素酸水で洗浄します。


②そのうえで、乾燥した穴を潤すために局所麻酔軟膏の「プロネスパスタ®」を滅菌吸収性ゼラチンスポンジの「スポンゼル®」につけて、ドライソケットに詰めます。スポンゼルが取れないように、そのあと歯肉縫合などで固定をすることもあります。

③薬の処方・鎮痛剤や抗生物質・抗生剤などを処方することとなります。処方箋の指示にきちんと従いましょう。

・自分で治す方法

痛みがある際は我慢をせず、市販の鎮痛剤(痛み止め)を服用していただいても構いません。

血液循環を阻害しない程度で、短時間であれば「冷えピタ」のようなものを利用するか、水で濡らしたタオルで冷やしても大丈夫です。

ただし、ドライソケットは熱いタオルで温めたり、氷で極端に冷やしたりするのはやめましょう。

〈ドライソケットを放置するとどうなる?〉

特に治療をせず放置をしていても、ほとんどが一か月ほどで改善し、自然治癒がはじまります。

しかしながら、その間はドライソケットの痛みなど症状は続きます。また、ドライソケットは抜歯後の穴が開いたままの無防備な状態です。

放置をすると、穴に食べかすなどが入ることによって感染症リスクが高まり、状態が改善されず治癒速度が遅れ、長期になる場合もあります。

さらに激しいうがいや喫煙・飲酒などが続くと、通常よりも傷口が激しく腫れ、激しく痛み、治癒するまでに時間もかかり、つらい状態が長く続きます。

抜歯後、もしドライソケットを疑うような痛みが続く場合は、抜歯をした歯科に相談をし、適切な治療を行ってもらいましょう。