「せっかく矯正したのに、また歯並びが乱れてきた気がする…」
「以前、矯正治療したけれど、もう一度きれいにしたい」
このように 矯正治療の“再治療”を希望される方は年々増えています。
再治療は決して珍しいことではなく、正しい診断と治療計画があれば、再び理想の歯並びへ近づくことができます。
この記事では、
- 再治療が必要になるよくある原因
- 再治療は実際に可能なのか
- 方法・期間・費用の目安
- 再治療を成功させるためのポイント
をわかりやすく解説します。
矯正の再治療が必要になる”主な原因”
後戻り(リテーナーの装着不足)
矯正後は歯を支える骨が安定するまで時間が必要です。その間にリテーナー(保定装置)を十分に使用しないと、歯は元の位置に戻ろうとしてしまいます。
- リテーナーをほとんどつけなかった
- 夜だけの使用の切り替えるのが早すぎた
- リテーナーが合わなくなったまま放置してしまった
後戻りは再治療相談の中で最も多いケースです。

前の矯正の治療計画が不十分だった
矯正治療は、本来歯列全体のバランス・かみ合わせ・骨格の関係を総合的に診断した上で治療計画を立てる必要があります。しかし、、、
- 費用を抑えたい
- 早く治療を終わらせた
- 気になる部分だけ治したい
といった理由で、部分矯正のみを提案されたり、自ら希望してしまうことで、不正咬合の根本原因が改善されないまま治療が終わってしまうケースがあります。
成長・加齢による変化(特に下の前歯)
歯は矯正治療後も、一生ずっと微妙に動き続けます。特に下の前歯がガタガタになりやすく、40~50代で再治療を希望する方も多いです。

親知らずの影響
親知らずが横向きに生えてくると、歯列に圧力がかかり、前歯のガタつきが目立つことがあります。
親知らずがあるだけで前歯が必ずガタつくわけではありません。しかし、すでにスペースが不足している場合には、後ろからの圧力がガタガタの歯並びを助長することがあります。

生活習慣・クセ
- 舌癖(舌で前歯を押す)
- 口呼吸
- 歯ぎしり・食いしばり
- うつ伏せ寝、頬杖
矯正後の歯が新しい位置にまだしっかり落ち着いていない時期に、これらは歯が動く力として働くため、元の場所に戻りやすい状態につながります。

再治療は可能?どんな方法がある?
一度、矯正経験がある方でも、ほとんどの場合再治療は可能です。再治療には複数の方法があります。「前回と同じ装置を使う」とは限りません。
現在の歯並び・かみ合わせ・後戻りの程度・前回の治療方法 や患者さんの希望を踏まえ、適した再治療の装置をご提案します。
マウスピース矯正装置(インビザラインなど)
軽度〜中等度の後戻りや、前歯のガタつきなどであれば、マウスピース矯正装置のみで再治療できるケースが多いです。
また、「昔ワイヤー矯正をしたが、口元をもう一度整えたい」という理由で、2回目の全体矯正を マウスピースで行う方も増えています。
▼こんな方に向いています
- 目立たない治療方法を希望している
- 後戻りが少ない
- 昔の後戻りをやさしく(=なるべく痛みが少ない方法で)治したい

ワイヤー矯正(表側・裏側)
マウスピース矯正装置で十分動かなかったケースや、後戻りが大きいケース では、ワイヤー矯正で一度しっかり歯をコントロールし直すことがあります。
これは、「マウスピースで矯正がうまくいかなかった → ワイヤーで再治療」という典型的な再治療パターンです。
ワイヤーの方が得意な動き(回転のコントロール、歯の高さの調整、奥歯の位置調整など)があるため、複雑な歯並びやかみ合わせの改善に向いています。
▼症例紹介


- 主訴:ガタガタ・出っ歯が気になる
- 診断名:叢生
- 初診時年齢:30歳
- 使用装置:ホワイトワイヤー矯正
- 抜歯部位:上下左右第一小臼歯
- 治療期間:2年3ヶ月
- 費用:¥780,000(税込¥858,000)
- リスクと副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り
マウスピースとワイヤーの“併用”
実は、「全部をマウスピース」または「全部をワイヤー」だけではなく、一部だけワイヤーを使い、残りをマウスピースで仕上げるという治療方法もあります。
▼よくあるパターン
- 抜歯症例など大きな歯の移動をワイヤーで行い、その後マウスピースで全体を整える
- 奥歯のコントロールをワイヤーで行い、仕上げをマウスピースに切り替える
- 局所的なズレはワイヤー、軽度の後戻りはマウスピースで調整する
この方法は、ワイヤー矯正の確実さ × マウスピースの快適さの両方を活かせるという大きなメリットがあります。
部分的な矯正(ワイヤー or マウスピース)
前歯だけの傾きや、わずかなスペースの問題であれば、部分的に短期間で治す「部分矯正」 が選択できることもあります。
▼こんな場合に有効
- 下の前歯だけガタついている
- 軽度の後戻りで全体矯正ほどではない
- 部分的なかみ合わせの改善だけ必要
ワイヤーでもマウスピースでも、適応に合わせて使い分けます。
このように、さまざまな組み合わせがあります。「再矯正=◯◯しかできない」ということはなく、
状態に合わせて最も効果的な方法を柔軟に選ぶことができます。
再治療の期間と費用の目安
期間
状態により大きく異なります。
| 後戻りの程度 | 期間の目安 |
|---|---|
| 前歯の軽度の傾き | 3〜6ヶ月 |
| 中等度のズレ | 6〜12ヶ月 |
| 噛み合わせから治す場合 | 1〜2年 |
費用
医院によって異なりますが、一般的には、全体矯正(歯列全体を動かす本格矯正)の費用の相場は下記のとおりです。
- ワイヤー矯正(表側):70〜120万円程度
- 舌側矯正(裏側矯正):120〜180万円程度
- マウスピース矯正装置(インビザライン など):80〜120万円程度
検査料・調整料・保定装置(リテーナー)の新規作成などが別途必要になる可能性があります。しかし、前回矯正を受けた医院だと部分矯正で比較的費用がかからずにすむ場合もあります。
- ワイヤー部分矯正:10〜30万円程度
- マウスピースの部分矯正:20〜40万円程度
再治療を成功させるためのポイント
原因の分析がもっとも重要
再治療は「ただ動かし治す」だけではまた後戻りします。“なぜ歯並びが戻ったのか” を正確に診断することが成功の鍵です。
CT、口腔内スキャン、かみ合わせ分析、生活習慣の確認など、原因を明確にして計画を立てます。

リテーナーを正しく使う
再治療後は、初回治療よりも 保定がさらに重要です。特に前歯の後戻りが強い方は、固定式(fix)リテーナー(裏側に細いワイヤーをつける)が推奨されることもあります。
関連記事:【リテーナーの重要性】矯正治療は装置が外れたら終わり?
舌癖や口呼吸の改善(MFT)
再治療を検討する方の多くに舌の癖・口呼吸 の問題がある可能性があります。MFT(口腔筋機能療法)は再治療の成功に欠かせません。
再治療が向いているのはこんな方
- 以前より前歯のガタつきが気になる
- 写真で口元が気になる
- 噛みにくさ・前歯の当たりが気になる
- リテーナーを失くしてしまった
- 親知らずが生えてきて歯が押されている感じがする
- 昔に比べて歯並びが変わった気がする
1つでも当てはまれば、早めの相談がおすすめです。
まとめ
矯正治療の再治療は決して珍しいことではありません。大切なのは、「なぜ後戻りしたのか」 を正しく分析し、患者さんに合った方法で治療を行うことです。
再治療によって、「昔よりもっときれいな歯並びになった!」と喜ばれる方も多くいらっしゃいます。
気になる症状があれば、まずはお気軽にご相談ください。


