歯の矯正治療というと、ひと昔前まではワイヤー矯正が主流でしたが、現在はマウスピース型矯正装置(インビザラインなど)も広く知られるようになりました。
当院でも、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置を組み合わせて治療を行うことがあります。「マウスピースで矯正したいけれど、ワイヤー矯正が必要と言われた」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
歯並びや必要な歯の移動によっては、最初にワイヤー矯正を行い、その後マウスピース型矯正装置へ移行する方法も選択肢となります。それぞれの装置の特徴を活かし、一つの治療の中で使い分けるという考え方です。
この記事では、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置を併用した実際の症例をもとに、治療の流れや期間・費用、メリットと注意点をご紹介します。
目次
ワイヤー矯正とマウスピース矯正装置(インビザラインなど)の併用とは?
一つの矯正治療の中で、必要な歯の移動に応じてワイヤーとマウスピースの矯正装置を使い分ける方法です。
ワイヤー矯正では、歯に接着したブラケットとワイヤーを使って歯を動かします。マウスピース型矯正装置では、透明な装置を順番に交換しながら歯を動かします。
装置にはそれぞれ特徴があるため、歯並びや歯根の状態、抜歯の有無などを確認して、単独で使うか、組み合わせるかを検討します。「ハイブリッド矯正」と呼ばれることもあります。
「途中で切り替える方法」と「同時に使う方法」がある
組み合わせ方には、ワイヤーからマウスピースへ切り替える方法のほか、マウスピースで治療しながら一部の歯に固定式装置を用いる方法などがあります。
この記事では、主に”ワイヤー矯正からマウスピース型矯正装置へ移行する治療”についてご紹介します。

【症例】ワイヤー16ヶ月・マウスピース9ヶ月で治療した症例
出っ歯や横顔の口元の突出、ガミースマイルを気にして来院された、初診時23歳の患者さまです。
歯並びのでこぼこは目立ちませんでしたが、前歯の位置を改善するスペースが必要だったため、上下左右の第一小臼歯を抜歯しました。治療ではワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置を使い、矯正用アンカースクリューも併用しました。




主訴:出っ歯、横顔の口元の突出、ガミースマイルが気になる
診断名:上顎前突
初診時年齢:23歳
使用装置:表側ワイヤー矯正、マウスピース矯正装置(インビザライン)、矯正用アンカースクリュー
抜歯部位:上下左右第一小臼歯
治療期間:ワイヤー矯正16ヶ月、マウスピース矯正装置(インビザライン)9ヶ月
費用:1,012,000円
リスク・副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り
※治療期間や結果には個人差があります。費用は治療内容や契約時期によって異なります。
【メリット】ワイヤーとマウスピースを併用する理由
必要な歯の移動に合わせて装置を選べる
抜歯スペースを閉じる際などには、歯の見える部分だけでなく、歯根の位置や歯の傾きにも配慮が必要です。症例によっては、こうした移動の一部にワイヤー矯正を用い、その後の治療をマウスピース型矯正装置で進める計画を立てます。
どちらかの装置が常に優れているということではなく、必要な歯の移動に合わせて使い分ける考え方です。
マウスピース単独では難しい症例でも、ワイヤーとの併用で治療できる場合がある
初診時にマウスピース型矯正装置のみでの治療が難しいと判断されても、最後までワイヤー矯正が必要とは限りません。ワイヤー矯正で歯を動かした後、状態を確認し、マウスピースへ移行できる場合があります。
結婚式などの予定に合わせて、目立ちにくいマウスピースへ移行できる場合がある
「結婚式までに歯並びを整えたい」「成人式ではワイヤーの見た目が気になる」といったご希望がある方にも、装置を併用する方法が選択肢となります。
目標の時期に向けてワイヤー矯正で歯を動かし、その後、目立ちにくく取り外しのできるマウスピース型矯正装置へ移行して、治療を続ける方法です。
ただし、ご希望の時期までに整えられる範囲や、装置を切り替えられるタイミングは、歯並びや治療の進み具合によって異なります。大切な予定がある方は、治療開始前にご相談ください。
【適応】併用治療が選択肢となる歯並び
装置の併用は、すべての患者さまに必要なわけではありません。当院では、例えば次のような歯並びで、必要な歯の移動に応じて併用を検討することがあります。
口元の突出があり、抜歯をして前歯を後ろへ下げる場合
いわゆる「口ゴボ」で、前歯を後ろへ下げるスペースを確保するために抜歯が必要な場合です。歯の傾きや歯根の位置を調整しながら抜歯スペースを閉じるため、治療前半にワイヤー矯正を用いることがあります。

かみ合わせが深い場合(過蓋咬合)
上の前歯が下の前歯に深く覆いかぶさるかみ合わせです。前歯や奥歯の高さなどを調整する必要があり、治療の一部にワイヤー矯正を取り入れることがあります。

一部の歯のかみ合わせが左右にずれている場合(鋏状咬合)
上下の歯の横方向の位置関係にずれがあり、一部の歯が通常とは反対にかみ合っている状態です。ずれのある歯の位置や傾きなどに応じて、ワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置を組み合わせる場合があります。

これらの歯並びでも、マウスピース矯正装置のみで治療できる場合があります。併用の必要性は、歯並びやかみ合わせ、歯根や骨の状態などを確認して判断します。
【治療の流れ】途中で切り替える流れとタイミング
- 精密検査・治療計画
歯並び、かみ合わせ、歯根や歯を支える骨の状態などを確認し、装置を併用する必要性を検討します。マウスピースを希望される場合も、治療目標に合う方法を相談します。 - ワイヤー矯正で歯を動かす
計画に沿ってワイヤー矯正を進めます。使用期間は一律ではなく、症例によって異なります。 - 移行できる状態か確認・マウスピースを作製
歯の位置やかみ合わせを確認し、移行後の計画を立てて、マウスピース矯正装置を作製します。抜歯スペースが完全に閉じる前に移行する場合もあります。
ワイヤー装置を外す時期は、歯科医師の指示に従ってください。 - マウスピース型矯正装置で治療を継続
指示された装着時間と交換間隔を守り、残ったスペースや歯の位置、かみ合わせを調整します。途中で追加のマウスピースが必要になる場合もあります。 - 歯の移動終了後は保定へ
治療後の歯並びを維持するため、保定装置を使用します。装置を併用した場合も、後戻りを防ぐための管理が必要です。
【治療期間】併用すると治療期間は短くなる?
装置を併用すれば、必ず治療期間が短くなるわけではありません。
併用の目的は、必要な歯の移動に適した装置を選び、治療を進めることです。治療期間は、歯の移動量やかみ合わせ、歯や歯周組織の状態、マウスピースの使用状況などによって変わります。
相談の際には、治療全体の見込みに加え、「ワイヤーを使う期間」「マウスピースに移行するための条件」も確認しましょう。

【費用】2種類の装置を使う分、高くなる?
当院では、治療計画の中でワイヤー矯正とマウスピース型矯正装置を組み合わせる場合、装置を変更することによる追加料金はいただいておりません。
ただし、治療費の総額については契約内容・治療内容によって異なります。ホワイトワイヤーなどのオプション費用も含め、カウンセリング時にご確認ください。
治療費の詳細はこちらをご覧ください。
【デメリット】併用治療の注意点
マウスピースへ移行した後は装着時間の管理が必要
ワイヤー矯正と異なり、マウスピースはご自身で着脱します。指示どおりに装着できないと、予定した歯の移動が進まず、治療計画の修正が必要になることがあります。
装置が変わるたびに慣れる必要がある
ワイヤー矯正中は歯磨きや食事、装置による刺激への対応が必要です。マウスピースへの移行後は、着脱や洗浄、装着時間の管理など、新しい習慣に慣れる必要があります。
併用しても矯正治療に伴うリスクはある
痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、歯周病、後戻りなどが起こる可能性があります。装置を組み合わせることで、これらのリスクがなくなるわけではありません。
結婚式や成人式などの予定は、余裕を持ってご相談ください
結婚式や成人式などに合わせてワイヤー装置からマウスピース型矯正装置への変更を希望される場合は、治療計画や装置の準備のため、余裕を持ってご相談ください。
よくあるご質問
Q.抜歯をする矯正でもマウスピースへ切り替えられますか?
症例によっては可能です。今回紹介した2症例も抜歯を伴う治療でした。ただし、抜歯した部位や必要な歯の移動、歯根の状態などによって判断します。
Q.最初からマウスピースだけで治療することはできませんか?
マウスピース型矯正装置のみで治療できる場合もあります。装置の希望と検査結果を踏まえ、単独での治療と併用する治療の違いをご説明します。
Q.ワイヤーに慣れたら、そのまま続けてもよいですか?
治療上問題がなければ、ご希望を伺いながらワイヤー矯正を継続することもあります。途中で希望が変わった場合もご相談ください。
Q.マウスピースからワイヤーへ変更することもありますか?
あります。歯の動きや装着状況などを確認し、治療計画を変更する場合があります。
関連記事:「マウスピース型矯正装置におけるリカバリーテクニック」
ワイヤーとマウスピース、どちらを使うか迷っている方へ
矯正治療では、一度選んだ装置を必ず最後まで使い続けるとは限りません。歯並びやかみ合わせ、必要な歯の移動に応じて、複数の装置を組み合わせる選択肢もあります。
大宮SHIN矯正歯科では、治療目標と患者さまのご希望を確認しながら、装置や治療の進め方をご提案しています。
「できればマウスピースを使いたい」「ワイヤーを使う期間を知りたい」という方も、まずは初診相談でお聞かせください。


