こんにちは!大宮SHIN矯正歯科の歯科医師Mです。
歯列矯正で得られるメリットは、審美的な見た目の改善だけでなく、虫歯の予防や身体の不調が改善される可能性などたくさんあります。
歯並びを良くすることで得られるメリットについて、今日は脳科学の面からお伝えします。
突然ですが、皆さんはこんな奇妙なバランスの小人をご存じでしょうか?
このイラストの実物は、ロンドンの自然史博物館にある【ペンフィールドのホムンクルス】という人形で、ロンドンの自然史博物館に展示されています。
ペンフィールドのホムンクルスとは
カナダの脳神経外科医ワイルダー・グレイヴス・ペンフィールド博士は、身体の各機能が大脳の中でどれくらいの領域を司っているのかを研究し、その結果を現したのがこの、ペンフィールドのホムンクルス(人間の模型)です。
そしてもうひとつ、「ホムンクルスの図」というものもあって、この図は、脳の感覚を感じとる「感覚野」と、動作を指令する「運動野」それぞれが体のどの部分と「密接につながっているか」を示したものです。
これらの人形や図は、医学生は生理学の授業や認知症予防などの説明をする際に用いられています。
このホムンクルスを見てわかる通り、大脳にとって「指(手)」 と「口」が多くの面積を占めています。赤ちゃんがあらゆる物を手や指で触るだけでなく、口に入れたりするのは、そうすることで、手指や口の感覚からその物の特徴や性質をとらえ、脳が刺激され活性化されているのです。
「指(手)は第2の脳」という言葉と同様に、【口から伝わる刺激はより脳を活発にする】ということが証明されていることがわかります。
口から伝わる刺激はより脳を活発にする
もう少し、ホムンクルスの人形や図が示すように、なぜ脳の中で口が体全体の約4分の1を占めているのか探っていきたいと思います。脳の中には12本の脳神経が走っています。
(1)嗅神経…嗅覚を司る神経
(2)視神経…視覚を司る神経
(3)動眼神経…運動神経による眼球運動と、副交感神経による瞳孔運動を司る
(4)滑車神経…眼球運動を制御する神経
(5)三叉神経…脳神経の中で最大の神経、3枝(眼神経、上顎神経、下顎神経)に分かれる。
(6)外転神経…眼球運動を制御する神経
(7)顔面神経…涙腺や口蓋線などの分泌作用、および味覚を司る混合神経
(8)内耳神経…聴覚と平衡覚を司る神経
(9)舌咽神経…運動、知覚、味覚などの混合神経
(10)迷走神経…頸部(首)から胸部、腹部半ばすぎまでの臓器を支配する神経
(11)副神経…運動性神経性繊維
(12)舌下神経…舌運動を支配する運動性神経
この12本の脳神経のうち、青い文字の7本が口腔領域(口の中)に関する神経なのです。口は主に食事や会話するときに大きく機能します。美味しい食事やひととの楽しい会話は、幸せホルモンと呼ばれているオキシトシンを分泌しやすくなるともいわれており、脳への刺激がとても大きいのです。
さて、ここで重要となってくるのが、口の中の【歯と舌】です。食事や会話のときに大きく活動する歯や舌に機能異常があった場合、よくかんで食事をすることができないので、脳に良い刺激を伝えられません。
脳に良い刺激を与える歯並びとは
好ましい歯並びは、奥歯がしっかり咬めている・強く咬んでいる歯がないという状態をいいます。
ガタガタや出っ歯、開咬(オープンバイト)などといった不正咬合は、逆に奥歯がしっかり咬めていない・特定の歯だけ強く咬んでいる、という状態になり、全ての歯に均等な咬合力がかかっていないと、歯からの刺激が正しく脳に伝わっていないことになります。
また、不正咬合をそのままにしておくと、将来的に歯を失う可能性が高くなります。歯がある人に比べて歯が無い人が認知症のリスクが高くなるという統計も、歯が脳への刺激がとても大きいということの裏づけになります。
正しい舌の状態とは
ホムンクルスの人形で、手・唇と共に大きく描かれている【舌】。東洋医学では「舌診」が重んじられており、粘膜に覆われ、血管がたくさん集まっているとても敏感な器官である舌は、体質や体調を映し出す鏡と言われています。「舌は健康のバロメーター」という言葉がある所以ですね。
では、正常な舌とはどんな状態の舌をいうのでしょうか。通常の舌の位置は上顎の【スポット】という位置に収まっています。しかし、低位舌(ていいぜつ)や舌突出癖がある場合はこのスポットにうまく舌が収まっておらず、舌が正しく機能していないことになります。
低位舌(ていいぜつ)とは、舌の筋肉が働かずに舌がダランと下がってしまい、下顎の歯列の中・もしくは歯列をはみ出した状態で、力なく横ばいに広がっている様子をいいます。
舌突出癖とは、日常的に舌が前歯を押し出しているような状態です。お話しているときやお食事中に舌が歯列から飛び出て見えています。舌癖についてはこちらのブログに詳しく書かれています。
舌が正常な位置になく正しく機能していないと、脳への刺激がうまく伝わらないだけでなく、悪い歯並びにもつながります。
まとめ
正しい歯並びや舌の動きが、脳の機能に影響を及ぼすことがご理解いただけたでしょうか。
(あれ…?ひょっとして、うちの子、うまく咬めてない?)
(もしかして、この子、舌がうまく動いてないのかしら…?)
と、少しでも違和感を感じたら、一度矯正歯科に相談しましょう。
お子さまの歯並びが、現在どういう状態なのか、舌がうまく機能しているかを矯正専門の歯科医師が確認し、すぐに治療が必要かどうか、ひとりひとりに合った改善方法を丁寧にお話しさせていただきます。