こんにちは。埼玉県さいたま市 大宮SHIN矯正歯科の院長の矢野です。

矯正治療の「マルチブラケット法」では、歯毎に一つずつブラケットという小さな装置を接着します。そのブラケットにワイヤーを通し、力を加えていくことで、歯並びを整えていきます。ワイヤーは、治療開始から終了までずっと同じものは使用しません。治療の進行状況や目的に合わせ、ワイヤーの種類を変えていきます。

矯正治療のワイヤーの役割

矯正治療におけるワイヤーは治療中どのような役割を果たしているのでしょうか。ブラケットにワイヤーを通すことで、歯に適切な力をかけながら動かしたい方向に向かって徐々に移動させ、歯並びを整えていくこができます。

ブラケットは、ワイヤーを固定するための装置であって、あくまでも矯正治療において重要な役割を果たすのは「ワイヤー」です。

ワイヤーの材質

歯科矯正治療では、「形状記憶合金」といわれるニッケルチタンワイヤーが使われることが多く、超弾性ワイヤーとも呼ばれます。形状記憶合金は、ある一定の温度以上では、形態を変形させてもすぐに元の形態に戻る性質を持つ合金です。

例えば、バネを想像してみてください。バネは力を加えて縮めても、自分の力でまた元に戻ろうとします。このように、曲げたワイヤーが元に戻る力を使ったり、動かしたい方向に向けて力をかけることによって歯を並べていくことができます。

ワイヤーの色

形状記憶合金のニッケルチタンワイヤーはメタルワイヤーとも呼ばれます。メタルワイヤーは、治療面では高い効果を発揮しますが、銀色なので目立ちやすく審美的に気にされる患者さんも多いです。そのため、最近では、メタルワイヤー以外に、審美性に特化したさまざまなワイヤーを扱う歯科医院も増えています。

ゴールドワイヤー

メタルワイヤーに金合金をコーティングしたものです。ゴールドのコーティングは剥がれにくい上に、歯や歯茎の色に馴染みやすく、キラキラと光るようなゴールドではないためメタルより目立ちにくいです。(当院ではゴールドワイヤーは治療に使用していません。)

ホワイトワイヤー

メタルワイヤーに白色ポリウレタンという素材をコーティングしたものです。このポリウレタンは剥がれやすく、まだら模様になってしまう場合が多いです。白色なので目立たなそうですが、まだらになると余計目立ってしまったり、人間の歯は真っ白ではなく少し黄色がかっているので、ホワイトワイヤーだと浮いてしまう可能性があります。

ワイヤーの形状

ワイヤーの色以外にワイヤーの形にも種類があります。

ラウンドワイヤー

治療初期で使用される断面が丸いワイヤーです。ワイヤーは、細いほど力が弱く痛みも少ないです。そのため、治療開始初期は細いラウンドワイヤーを使用します。

ラウンドワイヤー

角ワイヤー、スクエアワイヤー

治療が進み、歯並びが揃ってきた時に使用する断面が正方形もしくは長方形のワイヤーです。力を強くかけられるため、治療終盤の細かい歯の移動や位置の修正に適しています。

スクエアワイヤー

ワイヤーの太さ

ワイヤーの大きさ、サイズはインチで表記されます。例えば、よく使用される一番細いワイヤーが 0.010 インチですので、ミリ換算すると 0.254 ミリになります。実際に見ると、髪の毛くらい細いです。表側の矯正治療では、0.012インチが一般的です。その後は歯の動きに合わせてワイヤーのサイズや種類などを変更していきます。

ワイヤーの交換頻度はどのくらい?

ワイヤーは、治療初期は月に一回の頻度で交換していきます。歯並びの動きに合わせて、ワイヤーのサイズを上げていくのですが、患者様によっては歯の動きが遅く1ヶ月後にサイズを上げるのはタイミングが早すぎてしまう場合があります。

その場合は、同じワイヤーでもう少し時間を置き、歯が動いてきた段階でワイヤーを交換します。治療が進み、最後の段階のワイヤーになるとそれ以降はワイヤー交換をせずにワイヤーの微調整で治療の最終段階の仕上げに入ります。

患者様の希望や歯の動きに合わせて

矯正治療は、さまざまな種類のワイヤーを選択していきます。患者様が目立ちにくいワイヤーを望めば、審美性に特化したワイヤーを選択することが可能です。また、治療の進行状況に合わせてサイズを変え、患者様の理想の歯並びに近づけていきます。

現在は、マウスピース型矯正装置(インビザライン)のようなマウスピース矯正治療も多いですが、ワイヤー治療は細かい調整に対応することができるのが利点です。目立ちやすいという欠点はありますが、矯正治療の効果を十分に発揮できるワイヤー矯正は理想の歯並びに近づけやすい最も優れた治療法といえるでしょう。

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