こんにちは。埼玉県さいたま市 大宮SHIN矯正歯科の院長の矢野です。矯正治療に使用する矯正装置のひとつ、急速拡大装置についてご紹介します。
目次
急速拡大装置とは
急速拡大装置は、上あごに装着し、上あごの骨自体を大きく側方に拡大する目的で使用される矯正装置です。固定式装置のため、短期間で、確実に骨にアプローチできることから「急速」と呼ばれています。
骨が拡大する原理を説明します。口蓋と呼ばれる上あごの中央(下の写真の点線部分)は2枚の骨が合わさっています。この2枚の骨の真ん中の部分に、側方にかけて大きな力をかけるとだんだんと離れていきます。
離れたからといって、すぐに装置を外してしまうのではなく、離れた後も一定期間装置がついた状態をキープしておくと、骨と骨の間に新しい骨が添加され、安定してきます。このようにして、骨自体を拡大していきます。歯ではなく骨自体を拡大するため後戻りも少ないといわれています。
急速拡大装置は何歳が対象?大人が使うの?
成長期のお子さまは骨が柔らかいので、歯列を側方に広げる場合は拡大床(かくだいしょう)という取り外しができるネジ付きの拡大装置を使用しています。しかし、全ての歯が永久歯に生え変わる頃には骨がだんだん固まってきて、より強い力をかけないと歯列が広がらないため固定式の急速拡大装置を使用します。
急速拡大装置の構造上、歯に金属のバンドを付けて装置をお口の中に固定するため、前から数えて4番目の歯(第一小臼歯)が永久歯に生え変わっている必要がありますので、早くても小学校、中学年以降の適応になります。
なぜ、急速なの?急速拡大装置の使用期間
短期間で歯列を拡大できることから「急速」拡大装置と呼ばれています。およそ3ヶ月〜半年間、奥歯にバンドで装置を固定し装着したままの状態になります。その間はネジを回して1日0.2~0.25mmのペースで拡大していきます。拡大後、ワイヤー矯正やマウスピース矯正装置(インビザライン)で治療していきます。
急速拡大装置の目的は?あごの骨を拡大する理由
急速拡大装置であごの骨を拡大する理由は何なのでしょうか。
あごの骨が小さいと、本来生えるべき場所に歯が生えず、他の場所に生えようとすることで歯並びがガタガタになってしまいます。このような状況を防ぐために、あごの骨を拡大し、永久歯が生えるべきスペースを確保することで歯並びの乱れを改善したり、顎骨の正しい成長を促すことができます。
急速拡大装置のメリット・デメリット
急速拡大装置は、短期間で歯列が拡大できることが最大のメリットといえます。患者さまの骨や歯並びの状態によって個人差はありますが、ワイヤー矯正やマウスピース矯正装置(インビザライン)単独で歯列を拡大していくより、急速拡大装置を使用することで治療期間が短縮されます。
デメリットは、違和感と痛みです。急速拡大装置は、上あご部分に大きな金属部分があります。その金属部分に舌が常に当たりますので発音はかなりしにくいですし、食事をする際は思うように咀嚼できないかもしれません。2週間もすれば大体の方が慣れてきますが、慣れた頃には急速拡大装置を外す時期かもしれません。
また、急速に骨を拡大するための痛みも伴います。違和感も痛みもありますが、急速拡大装置は、確実に短期間で骨を拡大できますので、メリット、デメリットを踏まえた上で選択できると良いかもしれません。
急速拡大装置の使用上の注意点
急速拡大装置は、使用方法を誤ると骨に大きく負担がかかったり、治療結果に問題が出てしまう可能性があります。
基本的に、装置の拡大は患者さま自身が行います。装置のネジを回していくことで骨が拡大する仕組みですが、基本的には1日に1〜2回ネジを回します。拡大する量は患者様により異なりますので、決められた拡大量を確実に得るために、決められた日数と回転数を守らなければなりません。
稀に回すのを忘れてしまい、翌日にまとめて2度回したり、治療期間を早めようと1日に何度も回してしまうと、骨や歯に負担が大きくかかり、最悪の場合、歯が抜けたりすることがあるので絶対にやめて下さい。
また、装置の拡大が進んでいくと、上の前歯の間に隙間が空いてきますが、これは一時的なもので最終的には閉じますので心配いりません。
最後に
急速拡大装置は、短期間で確実な効果が得られるのが特徴です。しかし、治療を進めていく上で患者さまの協力も非常に重要になります。
また、拡大していく量は決まっていますので、患者さんの判断で回す量を増やしたり、回すタイミングを変えるのは危険です。必ず歯医者の指示に従い、決められた量とタイミングを守るようにしましょう。
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