【子どもの受け口(反対咬合)の原因】

受け口になる原因には様々なものがあります。ここでは主な原因を二つご紹介させていただきます。

口唇・舌の癖

安静にしている時、舌は常に上顎にくっついているのが理想的です。しかし、それが上手くできず、舌がいつも下顎の歯の内側にある方がいらっしゃいます。

その場合、舌の力で下の前歯が押されて受け口(反対咬合)になることがあります。

舌癖 受け口 原因

また、上唇の力が強く、上の前歯が内側に倒れてしまったり、上唇を下の前歯でかむ癖などがあると、前歯のかみ合わせが反対になることがあります。

骨格的・遺伝的要因

受け口の主な原因として、骨格的な要因が挙げられます。

歯は顎の骨に埋まっているため、かみ合わせは顎の骨の位置に大きく影響を受けます。下顎の骨が前方にたくさん成長してしまったり、上顎の骨の前方への成長が足りない場合、かみ合わせが受け口(反対咬合)になります。

【子どもの受け口の治療】

受け口には様々な原因があり、それによって治療を始めるタイミングや、使用する装置が変わってきます。ここでは、お子様の年齢に分けて主な治療方法をご説明します。

乳歯のみが生えている年齢(3歳~6歳頃)

まだ大人の歯(永久歯)が生えていない小さいお子様の場合は、本格的な矯正治療の検査(型取りやレントゲン撮影)をしたり、複雑な矯正装置を使用することが難しいため、まずは簡単なトレーニングから始めます。

舌を上顎にくっつける練習をして頂いたり、舌や口唇を正しい位置に誘導するようなマウスピースの装置を使用して頂きます。

口唇の癖や舌の癖で反対咬合になってしまっている場合は、マウスピースだけで反対咬合が改善しますが、骨格的な要因があるお子様の場合は、大人の前歯が萌出してきた時(6~7歳頃)にまた反対咬合になってしまうこともあります。

②大人の前歯と奥歯が生えている年齢(6歳頃~)

このくらいの年齢になると、本格的な矯正装置を使用して治療をすることができるようになります。大人の歯と子供の歯が混ざっている年齢で始める治療を、小児矯正治療(Ⅰ期治療)と呼びます。

まず治療前に精密検査(お口の中の型どり・レントゲン撮影・写真撮影)を行い、受け口の原因を診断します。原因によって、治療方法や治療開始時期が変わってきます。

1)骨格的な問題がない場合

上顎・下顎の骨の位置に問題がない場合は、ブラケットとワイヤー、舌側弧線装置やマウスピースタイプの装置などを用いて、歯の傾き・かみ合わせを調整し、受け口を治していきます。

2)骨格的な問題があるが、小児矯正治療で改善が見込める場合

検査の結果、上顎の骨が後ろに下がってしまっていたり、下顎の骨が前に出過ぎていたり、もしくはその両方が認められる場合は、上顎前方牽引装置(じょうがくぜんぽうけんいんそうち)を使用し、上顎の骨の前方方向への成長を促します。

上顎前方牽引装置

上顎前方牽引装置は、お口の外にフェイスマスクを装着し、その名の通り、上顎の骨を前方に引っ張って受け口を治す目的で使用します。

しかし、患者さまの負担が大きいため、現在、当院では上顎前方牽引装置はあまり使用せず、プレオルソという小児矯正用のマウスピース型の装置やワイヤー矯正を用いることで改善できるようになっています。

上顎の成長は9歳~10歳頃がピークになりますので、そのあたりの年齢までに装置を使い始めることが多いです。

3)上下顎骨のずれがかなり大きい場合

お子様のうちには治療を行わず、成長(身長の伸び)が終わるまで経過を見た後、外科手術を併用した矯正治療で反対咬合を直していきます。

下顎の骨は身長が伸びる時に一緒に成長するため、もともと上下顎骨のずれが大きい方は、お子様の矯正治療で一度反対咬合を治しても、成長期を迎えた時にまた反対になってしまう可能性が大きいからです。

③すべて大人の歯並びに変わった後(12歳以降)

すべて大人の歯が生えた後は、年齢にかかわらず、成人矯正となります。

1)骨格的な問題がない、もしくは軽度の場合

ブラケットとワイヤーまたはマウスピース型矯正装置(インビザライン)で反対咬合を治していきます。

2)骨格的な問題がある場合

すべて大人の歯並びに変わっている年齢ですと、上顎の成長がほとんど終わっていることが多く、上顎前方牽引装置などの効果はあまり見込めなくなってきます。

顎のずれが大きく、お顔のバランスや横顔なども気になる場合は、下顎の成長が終わるまで経過観察を行い、身長の伸びが止まってから手術を併用した矯正治療を行います。