通院中の患者さまから、「MRI検査を受けることになり、矯正器具はどうしたらよいか?」という質問を受けることが時々あります。

MRIを撮影するにあたって、歯に固定されている矯正器具を外す必要の有無は、矯正歯科医から判断することはできません。事前にMRI検査をすることがわかっている場合は、MRI検査を担当する医師の方に必ず確認してください。

そこで、外すよう指示があった場合は、当院にお越しいただいた時に一旦、矯正器具を外します。そうなった場合、矯正治療が予定期間より延長する可能性があることをご了承いただけると幸いです。

そもそも、なぜ矯正治療中にMRIを撮影することになった時は確認が必要なのかをご説明します。

MRIの機械

MRI (エムアールアイ)とは

MRIとは,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)の略です。放射線を使用するCTやレントゲンとは異なり、磁力と電磁波を使って体内の状態を断面像として描写する検査です。

MIR検査は、あらゆる方向から身体の断面図を自由に撮影できるため、CT検査では見つからない小さな異常も見つけられるといった優れた検出能力を持っています。

しかし、MRI検査は強力な磁石や電磁波を使用するため、MRIの検査室内には金属類の持ち込みは一切禁止されています。女性の場合は金具のついた下着や、アクセサリー、ヘアピンなどは必ず検査の前に外すように指示されます。

そこで問題になってくるのが、歯列矯正の治療中でお口の中に金属の矯正器具が入っている場合です。MRIを撮影することになった矯正治療中の患者さまから時折ご相談を受けるのはこのためです。

金属を身につけてMRI撮影をした場合のリスク

MRI検査で使用する磁石と金属が反応して起きる可能性のあるリスクが3つあります。

①アーチファクト

検査画像の乱れや歪みが生じ、解剖学的に不明瞭な画像として描写され、MRI画像による診断の支障となる恐れがあります。

特に口周り、鼻の付近の頭部MRIを撮影する場合はお口の中に矯正器具が入っていると、アーチファクトの影響で画像に歪みが生じ、正確な診断ができなくなることがあります。

逆に、お口から離れた場所(首から下)の撮影であれば矯正器具がお口の中に入ったままでも問題ありません。

アーチファクトとは

②火傷の原因

金属が熱を持ち、患者さま自身が火傷してしまう可能性があります。

③機械破損や怪我の恐れ

MRIの機械に金属を持ち込むと、強力な磁場により、金属が機械に吸着して取れなくなったり。機械に穴が空いて破損の恐れや、患者さまご自身が大きな怪我をする可能性があります。

MRI撮影に影響がある可能性がある矯正器具

金属の種類によっては、MRIに影響がないものもあります。銀歯に用いる金銀パラジウム、矯正用インプラントに用いられているチタン、そしてステンレスは影響がないとされいます。

しかし、矯正で使用する形状記憶ワイヤーに含まれるニッケルや、固定式矯正器具の中にはコバルトクロムが使用されており、これらの金属はMRIに影響を及ぼす可能性があります。

ご自分のお口の中にどんな金属の矯正器具が入っているかわからない場合は、遠慮なく矯正治療の担当医に確認してください。

当院で治療に使用している、金属を用いた固定式の矯正器具は次ようなものがあります。

①ワイヤー矯正のワイヤー

ワイヤー矯正の場合、当院では金属のメタルブラケットは用いず、全ての方に歯の色と同系色の目立たないセラミックブラケットを使用しています。

そのため、MRIを撮影することになってもブラケットを外す必要はありませんが、ブラケットに通しているワイヤーは除去しなければいけない可能性があります。

ホワイトワイヤーもメタルワイヤーに白い塗装をしているので金属に該当します。

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②バンドを用いた固定式の矯正器具

③矯正用インプラント

④ゴム掛けのためのボタン

⑤FIXリーテーナー

矯正治療中にMRIを撮影することになったら

矯正治療中にMRIの撮影をすることになったら、必ず、撮影が必要と診断した医師に矯正器具がお口の中に入っていることを確認してください。

歯の表側についている矯正器具は先生の方から気づいてくれるかもしれませんが、歯の裏側についている矯正器具、FIXリテーナーなどは気づかれない可能性があります。

しかし、緊急でMRIの撮影が必要になった時など、事前確認ができなかった場合、患者さまの安全を最優先に考えて、矯正器具が外せないことが原因でMRIの撮影できない、ということもあります。

その場合は、代替の検査方法や、他のタイミングでのMRIの撮影について検討してもらいましょう。