舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)とは

舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)とは、文字通り舌を前に突き出す癖のことをいいます。舌突出癖のある方は、ものを飲み込む時の嚥下(えんげ)時や何もしていない安静時に、上下の前歯の間に舌を突き出させる癖が出てしまいます。

(舌突出癖の口もと)(

本来の正しい舌の位置は、上の前歯の裏側に少し触れるような位置ですが、日頃から常に舌が歯に強く触れていたり、歯を押し出すような力が加わってしまうと歯並びに影響を及ぼしてしまう可能性があります。

(本来の正しい舌の位置)

舌突出癖の原因

では、なぜこのような癖が出るようになってしまうのでしょうか。理由はいくつか考えられます。

口呼吸が原因

アレルギー性鼻炎、アデノイドや口蓋扁桃肥大などの鼻咽腔疾患があると、鼻呼吸が出来ず口呼吸が習慣的になります。この場合、舌が常に低い位置にあるため、ものを飲み込む際に舌を突出する癖がついてしまいます。

舌小帯が短い

舌小帯が短いと、舌をしっかり上にあげることができないためこちらも常に舌が低い位置にある状態になるため舌突出を引き起こしてしまいます。

指しゃぶり

指しゃぶりの習慣が長く続くと上下の前歯が開く開咬状態になり、その開いた隙間に舌を突出させる癖がついてしまいます。他にも毛布やタオルなどを噛む習慣があると、上下の前歯の萌出を妨げ、前歯間にスペースが生じて開咬となります。この結果、舌突出癖に繋がりやすくなります。

口腔周囲筋の筋力が弱い

口周りの筋力が弱くなると、舌とのバランスが崩れて必然的に舌で歯を押すようになり、舌を突出させる癖がついてしまいます。

舌突出癖による影響

舌突出癖は前歯や横の歯を押してしまうため、さまざまな不正咬合を引き起こしてしまいます。

舌突出癖による主な不正咬合は、上顎前突交叉咬合開咬が代表的なですが、不正咬合の原因は舌癖だけではなく、骨格、唇や頬の筋肉、咀嚼筋とも深く関連しています。

そのため舌突出癖のある方が全て同じ歯並びになるというわけではありません。

しかし、初めはそれほど歯並びに影響がないような癖でも、長年放置することで徐々に症状が悪化し、骨格にまで変化を生じさせてしまうケースもあります。

特に不正咬合の中でも開咬は、前歯でものが噛めないため奥歯の負担が増え、奥歯の寿命が短くなることがあります。

また、舌が正しく使えないために発音が不明瞭になりやすく、特にサ行、タ行を発音する際に影響が出る場合があります。

舌突出癖の治し方

何事も、長期に渡って習慣的になった癖を改善させるのは容易なことではありません。正しくない舌の位置を大人になるまで放置してしまうと、改善を図るのは非常に難しくなります。

そのため、舌突出癖が見つかった場合は小さい子どものうちに、なるべく早い時期に正しい舌の位置、正しいものの飲み込み方を覚え、それを習慣化していくことが重要です。

それをおこなっていくのにMFT(筋機能訓練)と呼ばれる訓練があります。

MFTは月1~2回のペースでおこなっていき、月2回のペースだと大体6~8ヶ月程度で訓練は終了します。

訓練が終了した後はメインテナンスで3~6カ月ごとに経過観察していきます。

MFTは継続的な努力が必要になりますが、舌突出癖や他の舌癖が原因で歯並びが悪くなっている方は、MFTをおこなうだけで歯並びが改善することもあります。

MFTとは?

【MFTの主な目的】

  • ・舌の筋肉の力を強くする
  • ・唇や頬、口の周りの筋肉の力をつける
  • ・正しい飲み込み方を覚える

MFTをおこない、普段の生活の中でトレーニング時に覚えた舌の位置やくちびるの状態を保ち、正しい飲みこみ方を習慣にすることが重要です。

【主なトレーニング内容】

  • ・正しい舌の位置を覚える“スポットポジション
  • ・噛む力と舌を持ち上げる力を強くする“バイトホップ
  • ・上あごに舌をすいつけたまま、舌を奥にずらす“ドラッグバック
  • ・正しい飲み込み方を覚える“スラープスワロー

道具を使わずに自宅で簡単にできるトレーニングもありますので、無理せず継続していくことが重要です。

舌突出癖は早めの改善を

MFTは、子どもだけではなく大人にも効果はあります。

しかし、MFTのみで歯並びの改善が見込める成長過程にある子どもと違い、大人の場合はMFTだけで歯並びを改善するのは難しくなります。

大人はすでに、骨がしっかりと固くなっていることや、年齢的に適応能力が低くなっているため、矯正装置による矯正治療とMFTによる口まわりの機能の改善を合わせて行っていきます。

舌突出癖は、癖が出始めてもすぐに歯並びなどに影響を及ぼすわけではありません。

見た目的にも気付きにくく、長期にわたって習慣化されてから気付く可能性もあります。

長期的に習慣化された癖は改善するのも努力が必要ですが、なるべく早い時期に改善することで将来的な不正咬合を予防することができます。

日頃から舌癖が無いか、意識したり歯並びを確認する習慣も大切です。