受け口(反対咬合・下顎前突)の原因とは?ワイヤー矯正で改善した症例紹介

2021.02.12UPDATE:2025.08.09

受け口とは、上の前歯が下の前歯より前に出ず、下顎が前に出た状態の不正咬合を指します。両親や親族に似たお顔の人がいる遺伝的要因舌癖が原因で起こるケースも多く見られます。

実際に15歳男性のワイヤー矯正治療で受け口を改善した症例をもとに、原因や治療期間、歯を抜かずに矯正した治療のポイントをご紹介します。

受け口の原因とは?

受け口の原因は様々ですが、大きく分けてふたつが挙げられます。

遺伝的要素

受け口は、特に遺伝性の要素が大きい不正咬合です。中世ヨーロッパのハプスブルク家をご存知でしょうか?

ハプスブルク家は政治的な理由により親族同士の結婚が多く、子供は遺伝の影響を強く受けたようです。肖像画には、下顎が大きく発達する様子の面々が多く描かれております。

かつては権威の象徴だったあの特徴的なあごも、現代では“反対咬合下顎前突”として歯並びやかみ合わせの悩みに発展してしまうこともあります。

舌のクセ(舌突出癖)

私たちの歯は、外から押す「頬や唇の力」と、内側から押す「舌の力」が均等に釣り合っていることで安定してキレイな歯列が保たれる仕組みです。

この力のバランスを「バクシネーターメカニズム」と呼びます。

受け口の方は舌の筋力が弱く、本来は舌の先が舌の先が上の前歯の裏側に軽くふれているくらいが理想的な位置なのに対して、舌が下に沈み込むように(低位置)横ばいに力なく広がっている様子が見受けられることが多いです。

特に、下顎が発達していく成長期にこの舌が正しい位置に収まっていないと、舌の前に押し出す力によって下顎はどんどん前方に押され、受け口になるケースがあります。

受け口の症例紹介と治療の流れ

来院の理由

15歳、男性の患者さま。学校の歯科検診や歯科医院で反対咬合を指摘され、受け口を改善して歯並びを気にせずに笑いたい!と、当院の初診相談を受診されました。

矯正中の不安(歯を抜くことについて)

患者さまのご希望もあり非抜歯(歯を抜かない)で治療を始めました。

「歯を抜かずに矯正したい」という声は多く、実際に抜歯せずに治療できるケースもあります。ただし、全ての方が非抜歯で治療できるわけではありません

歯並びやあごの骨格、歯の大きさ・バランスによっては、抜歯が最適な方法となることもあります。無理に非抜歯にこだわると、口元が前に出てしまったり、かみ合わせに不具合が出たりする可能性もあるため、まずは専門的な診断を受けることが大切です。

装置選び 

受け口(反対咬合)の原因は、上の前歯が内側に倒れていたことでした。そこで、治療ではワイヤー矯正で上の前歯を少しずつ外側に起こしていくことをメインに進めていきました。前歯の角度を整えることで、かみ合わせが自然になり、見た目や機能も改善されていきます

上顎の1本だけ内側に入っている前歯を前に出すための隙間を確保するためと、上顎前歯の唇側傾斜の両方を行うためにバネ(オープンコイル)を入れていきました。

オープンコイルとは?

主にワイヤー矯正で使われる歯と歯のあいだにすき間をつくるための小さなバネ(コイルスプリング)のことです。

わかりやすく言うと、歯がギュッと詰まって並んでいると、歯を動かすスペースが足りません。
そこで、歯と歯のあいだにオープンコイルを入れて、バネの力で少しずつすき間を広げていくのです。

 ただし、双方の歯に力が加わるため、一方の歯を動かしたい時には注意しなければなりません=反作用。今回のように歯を並べるためのスペース確保と同時に上顎の前歯を表に押し出したいときによく用います。

矯正治療はこの反作用の力をうまく使いながら、また時にはこの反作用を打ち消しながら歯を動かしていくことになります。

詳しい治療内容

こちらが治療終了時のお口の中のお写真です。

通院間隔等しっかりと守ってくださったので、歯を動かす治療期間は約2年3ヶ月でした。受け口がきれいに改善し、「口元を気にせず笑顔で写真に写ることができた!」と喜んでくださいました。

  • 主訴:受け口が気になる
  • 診断名:反対咬合
  • 初診時年齢:15歳
  • 使用装置:ワイヤー矯正
  • 抜歯部位:なし
  • 治療期間:2年3ヶ月
  • 費用:880,000円(税別)
  • リスク・副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り

治療で得られることと注意点

  • メリット:受け口が改善され、笑顔にも自信が持てるようになった
  • リスク:痛み、装置装着による虫歯のリスク、定期的な通院と指示の遵守が重要

まとめ

受け口(反対咬合・下顎前突)の原因とワイヤー矯正で歯を抜かずに治療した症例を紹介しました。

矯正治療では「見た目」や「かみやすさ」だけでなく、原因と再発の可能性を考えながら進めることが重要です。当院では、治療が必要な歯並びの原因を確認し、患者さま一人ひとりに適した方法をご提案しています。

矢野晋也 歯学博士/SHIN矯正歯科院長

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