
「歯列矯正を始めたいけれど、どのクリニックを選べばいいかわからない」
これは、矯正治療を検討している多くの方が抱える悩みです。
矯正治療は、見た目の改善だけでなく、かみ合わせや健康にも関わる重要な医療行為です。一度始めると数年単位の通院が必要となるため、信頼できるクリニックを選ぶことがとても大切です。
「矯正治療を受けたいがどこ行けば良いか?」という質問に対して、歯科矯正学を中心とした学問を取り扱う専門学術団体である公益社団法人日本矯正歯科学会は次の3つの回答をしています。
①かかりつけの一般歯科の先生に矯正の先生を紹介してもらう
医科の診療科目に内科、外科、小児科、耳鼻科、眼科…などがあるように、歯科は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つに分かれています。
一般歯科とは、「歯科」を指します。むし歯の予防や治療、歯周病や歯茎のトラブル全般を診療など、治療の多くが保険の範囲内で行われることから、保険診療のことを一般歯科とも言います。
馴染みのかかりつけの先生が紹介してくださった、矯正歯科の先生であれば安心ですね。

②矯正歯科治療を専門でおこなっている大学病院などの矯正歯科
特にかかりつけの歯科医師がいない場合は、歯科大学付属病院の矯正歯科を受診し相談します。大学病院の矯正歯科であれば難しい症例も対応可能ですし、確実に矯正専門の歯科医師による治療が受けられます。
しかし、診療時間が比較的短いため、予約が取りづらい、待ち時間が長いといったデメリットもあります。
③矯正を専門でおこなっている歯科医院を受診し相談する
矯正専門医を探すひとつの目安として、日本矯正歯科学会のホームページには”日本矯正歯科学会の認定医・指導医・臨床指導医を探す”という項目があります。
そこで、お住まいの地域など、通院しやすい場所にいる矯正専門の歯科医師を探すことができます。
日本では歯科医師免許があれば、例え矯正歯科治療の経験がなくても、上記4つの科目を看板に掲げてよい診療科目となっています。
よくある「〇〇歯科 矯正歯科 小児歯科」など複数の診療科目が書かれた歯科医院の看板は一見すると、歯科の総合病院であるかのような印象を受けます。
もちろん、それぞれの専門の歯科医師が在籍している医院もありますが、極端な話、医科に置き換えると耳鼻科の先生が整形外科の治療を行っている歯科医院もあるということです。
参考文献:日本臨床矯正歯科医会のホームページ
今回は、矯正治療を検討中の方に向けて「後悔しない矯正歯科選びの5つのポイント」をご紹介します。
矯正治療の専門性と実績を確認する
まず第一に確認したいのは、先ほども述べたようにそのクリニックが矯正歯科専門かどうかです。
歯列矯正は高度な知識と経験が求められる分野。矯正歯科専門の医師が常勤しており、過去の治療実績が豊富なクリニックは、安心して任せられます。
- 症例写真や治療事例を公開しているか、
- 長年の治療実績があるか
これらをホームページやカウンセリングで確認することで、信頼できるクリニックかどうかを見極めやすくなります。症例写真(before、after)を公開しているクリニックは、治療の仕上がりをイメージしやすいです。


当院は症例集ページでさまざまな治療症例を紹介しています
治療方針や説明が丁寧か
治療内容や期間、費用、リスクについての説明がわかりやすく、丁寧であることも重要です。
特に初診時のカウンセリングで、話をよく聞き、疑問や不安に真摯に答えてくれるかどうかをチェックしましょう。
信頼できるクリニックでは
- 初回相談時に丁寧なヒアリングがある
- 治療の目的や方法、費用について丁寧に説明してくれる。
- リスクやデメリットについてきちんと説明してくれる
矯正治療は患者との「二人三脚」で進めていくもの。信頼関係が築けるかは、説明の姿勢に現れます。 質問にしっかり答えてくれるか、無理な勧誘がないかも重要ポイントです。

矯正治療方法が複数ある
矯正方法にはワイヤー矯正(表側・裏側)やマウスピース矯正装置(インビザラインなど)などがあります。一つの治療法だけをすすめるのではなく、複数の選択肢から適切な方法を提案してくれる医院が理想です。
「見た目を気にする」「通院回数を減らしたい」などの希望がある場合はマウスピース矯正装置が有効ですが、マウスピースしか取り扱いがない場合、万が一、マウスピースでは治らないという状況になったときに従来型のワイヤー矯正によるリカバリーをする必要性がでてきます。
マウスピースによる矯正は行っているが、ワイヤー矯正は行っていないという歯科医院で矯正治療は注意が必要です。自分の症状に適した方法を中立的に提案してくれる歯科医院を選びましょう。


セファロ撮影検査を実地しているかどうか
セファロ(頭部X線規格写真)撮影は、歯並びだけでなく「骨格」や「顎の成長バランス」を分析するために必要不可欠な検査です。
上記の学会もセファロレントゲン撮影検査に基づく矯正治療を推奨しており、この検査を行っていないクリニックは、正確な診断が難しいため注意が必要です。
見た目は簡単に治りそうに思える歯並びでも、セファロを撮影することで目立つ前歯の歯並び以外に、かみ合わせに問題があることがわかり、部分矯正などでは治らない実は難しい症例である場合が多くあります。
セファロ撮影のメリット
- 将来のかみ合わせや顔貌変化まで予測できる
- 骨格や成長方向に合った治療方針を立てられる
- 客観的な数値データに基づく診断が可能
矯正治療の質を左右する「診断力」は、セファロ撮影の有無に大きく関係しています。歯根の露出や顎への弊害を回避するためにセファロレントゲン撮影検査をしている歯科医院での受診が大切です。

適正価格の医院を選ぶ
矯正治療は高額な医療であり、費用は数十万円~100万円以上とクリニックによって幅があります。
「安いから」「高いから安心」ではなく、治療内容に対して価格が適正であるかを見極めることが大切です。
確認すべきポイント
- 初診相談・検査・診断・装置料・調整料・保定装置のすべてが明記されているか
- 分割払いや医療費控除の説明があるか
- 装置ごとの追加費用など、あとから発生する可能性がある費用があるか
総額の内訳をしっかり確認し、「トータルでいくらかかるのか」が明瞭な医院を選びましょう。
とはいえ、従来の矯正治療のイメージを覆すような、「○円で矯正が気軽にできる」「歯列矯正が短期間ですぐにできる」「自宅で歯並びが治る」などの過度に価格の安さや治療期間の短さを強調する広告等を目にしたことはあるでしょうか。
矯正治療の相場は、大人の場合70~90万円です。(裏側矯正は100万円以上します)自費診療なので歯科医院によって料金に差がありますが、相場の範囲を超えた低価格で矯正治療を行っている場合は注意が必要です。
それでも、中には“安いに越したことはないよね?”と思う方もいるかもしれません。しかし、安いのにはそれなりの理由があります。企業努力では解決できないコストカットをしている場合、矯正治療の成功から遠ざかるのは自明の理です。
皆さんは風邪を引いた時に、薬局で風邪薬を買って飲みますか?それとも病院へ行きますか?これを歯列矯正に置き換えると、風邪薬が格安マウスピース矯正で、病院が矯正専門医が行う矯正治療です。まったくの別物ですね。
まとめ
歯列矯正は、人生を変えるような前向きな医療です。
一方で、治療の成果を左右する大きな要素が「クリニック選び」だということも事実です。
矯正治療の専門性・説明の丁寧さ・複数の選択肢・正確な診断・適正価格。
これらのポイントをしっかり押さえて、自分にぴったりのクリニックを見つけてくださいね。
納得できる治療と、安心して通える環境の中で、笑顔に自信が持てる日がきっと訪れます。