子どもの歯列矯正は、治療を開始する時期によって「一期治療」と「二期治療」と二つの段階に分かれています。
簡単に説明すると、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に始める矯正が「一期治療」永久歯が生え揃った段階から始める矯正が「二期治療」です。
よく聞く、子どものうちに矯正した方が、大人に比べると治療期間が短く治療費も安くすむ、といったメリットは本当なのでしょうか。
また「一期治療」だけでやめるということはできるのでしょうか。
目次
一期治療と二期治療のちがい
一期治療と二期治療は、治療の目的や矯正の方法が異なります。
①開始時期の違い
一期治療は一般的に6〜7歳ごろ(ただし、歯並びによっては6歳まで待たずにもっと早い時期に開始できる場合もあります)二期治療は小学校高学年にあたる10〜12歳ごろから開始します。
これは歯並びの違いにあり、永久歯が生えそろう前で顎が成長期にあり動きやすい時期が一期治療、永久歯が生えそろい、ほぼ大人と同じ状態となっている時期が二期治療と考えられます。
永久歯が生え揃うのは、第二大臼歯(いわゆる12歳臼歯)が生える、小学校高学年から中学生(12〜14歳)ですので、二期治療はそれ以降に開始することになります。
②治療目的の違い
一期治療は乳歯と永久歯が混在している混合歯列期のあごの成長が盛んなこの時期を利用して、お子さまの歯並びが悪くなる原因のひとつである、あごの大きさや上下のバランスを調整して、永久歯がきれいに生えるように、骨格の土台作りを行うことが主な目的です。
永久歯になるとあごの成長が止まってしまうので、抜歯や外科手術が必要な症例も、この一期治療であればその可能性がなくなります。
二期治療は一期治療であごの骨を整えた後、歯を1歯ずつ正しい位置へと移動させ、最終的に歯並びを整えることが目的です。
経過観察の期間を挟み、永久歯が生え揃ってから開始します。ワイヤー矯正やマウスピース矯正装置(インビザライン)など、大人と同じ矯正装置を利用し、同じように治療を行います。
③治療方法の違い
一期治療はあごの大きさや上下のバランスを調整して、永久歯がきれいに生えるように、骨格の土台作りを行うことが主な目的です。そのため、歯並びの土台となる顎や骨格を動かす装置を使用します。
歯並びによって、顎を広げる「拡大床」・上下の顎の筋肉の力を利用して成長期の歯と口の周りの組織を正しい位置に誘導し、噛む力を均等に分散させる「バイオネーター」・既成の子ども用のマウスピース型矯正装置(プレオルソ)などを使用します。そしてその後、ワイヤー矯正を用いることもあります。
それと同時に、歯並びへ悪い影響を及ぼす、舌癖・口呼吸・指しゃぶりなどの、口周りの悪習慣を改善するために、トレーニングを行うこともあります。
二期治療は、永久歯が生えそろっているため、歯にブラケットを装着しワイヤーを通すワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置(インビザライン)など、大人の歯列矯正と同じ装置を使用して治療を行います。
④費用の違い
一期治療は418,000〜462,000円(税込)、二期治療は440,000〜462,000円(税込)です。当院の治療費用については治療費のページに詳しく記載されています。
⑤治療期間の違い
治療期間の目安は、一期治療の治療期間はおおむね1年半、2期治療の治療期間は2年程度、来院間隔は1ヶ月に1回です。一期治療後、二期治療開始までの間には、永久歯が生えそろうまで3~6ヶ月ごとに保定しながら経過観察の期間もあります。
とはいえ、治療期間や経過観察の期間は、治療を始めた年齢や歯の状態に合わせて一人一人異なります。この経過観察の期間において、二期治療を行う必要がないと判断されると、一期治療のみで治療が終了する場合もあります。
同じく二期治療後にも、移動させた歯が後戻りしなくなるまでの期間、保定しながら3~6ヶ月ごとに経過観察を行います。
一期治療で終わる人はどのくらい?
子どもの矯正を一期治療だけで終了できる人の割合は、一般的には比較的少なく、全体の2〜3割程度とされています。ほとんどの場合、やはり一期治療終了後に二期治療に進むこととなります。
できれば、子どもの矯正ははじめから一期治療と二期治療を含めて1つの矯正治療であると考えていただいた方が良いでしょう。
しかし、当院では本当に一期治療だけで終わる方を含め、子どもの矯正を開始した6割の方が何らかの理由で一期治療のみでやめてしまいます。二期治療に進まれる方は4割くらいです。
一期治療だけでやめるとどうなる?
二期治療が必要とわかっていても、一期治療でやめてしまうこともあるかもしれません。その場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
二期治療に進まずに途中でやめてしまうと歯並びが元の状態に戻りやすく、歯や顎の正しい発育を守るうえでもお薦めはできません。
そもそも、一期治療は、歯を綺麗に並べるための土台作りにあります。顎周りを広げ、永久歯が生えるスペースを広げることが目的です。その後、二期治療で一歯ずつ正しい位置へと移動させ最終的な歯並びへと整えていきます。
そのため、一期治療でやめてしまうと、希望されていたキレイな歯並びまでたどり着くことができない可能性があります。
一期治療で終わる歯並びはどんな歯並び?
とはいえ一期治療後、経過観察になりやすい歯並びもあります。
①前歯の軽度の不揃いや1歯だけの不揃い
前歯の軽度の不揃いや1歯だけのクロスバイト(交叉咬合)の場合、骨格や歯の大きさに問題がない場合がなければ、治療後の後戻りはほとんどありません。
②顎が小さいことで前歯がでこぼこだったのが、改善された場合
歯が並ぶスペースが不足しており前歯にでこぼこ(叢生)があるタイプ。十分に拡大後も戻らないように矯正装置は使用し続け、問題がなければ永久歯が生え変わり終わった際に終了となります。
さらに審美的に細かな仕上がりやかみ合わせも仕上げたい方は、第二期治療に進むこととなります。
③受け口(反対咬合)、出っ歯(上顎前突)、上下の歯がかみ合わない歯並び(開咬)
受け口(反対咬合)、出っ歯(上顎前突)、開咬といった症状は、「一期治療」で改善後も下あごの成長観察があるため長期の経過観察が必要になってきます。
女子の成長期ピークが14歳、男子はさらに長く17歳のため、装置の使用期間も長くなります。
子どもの矯正を途中で(一期治療)やめてしまっても再開できる?
矯正治療を途中でやめてしまっても、再治療はできます。しかしながら、時間が経過すると、子供の顎は柔軟な分、すぐに歯並びも元の位置に戻ってしまい、再開というよりは再び一からやり直し、ということになります。
同じ歯並びを、大人になってから矯正するのと二期治療で矯正する場合を比較すると、二期治療の時期の方が治療期間が短く、費用も少なくすみます。
子どもが矯正をやめたいと言った時
子どもの矯正治療を、引越しなどなんらかの家庭の事情で中断するのではなく、お子さま自身が”矯正をやめたい”と言うこともあるかもしれません。子どもの矯正は当事者であるお子さまの前向きな治療参加が不可欠です。
一方的に押し付けるのは、結果として治療終了まで完走は難しいと思ったほうがよいでしょう。
とはいえ、子どもの矯正は大人だと抜歯や外科手術を伴う場合でも、子どものうちに土台を改善することでそれらを回避するなどのメリットもあり、またそれができるのも小児の間の短期間のみでもあります。
「装置が合わない、かっこわるい」
「歯が痛い」
「矯正する価値がわからない」
「歯医者が怖い」
子どもの気持ちを尊重しながら、なぜ途中でやめたいのか、丁寧に子どもなりの意見をまず聞いてあげましょう。しっかりと向き合うことで、心を落ち着け、親子で冷静に問題点をさぐり、よりよい解決をすることができるかもしれません。
必要であれば、医院で素直に担当医に気持ちを伝えていただくのもよいでしょう。お子様の歯並びや矯正のタイミングなど、わからないことがあれば是非当院の初診カウンセリングにお越しください。ご希望など伺いながら、丁寧に説明をさせていただきます。