矯正治療では、歯並びのガタガタをなおしたり、かみ合わせを良くするだけでなく、横顔や口元の美しさ・バランスを考えて歯を動かしていきます。出っ歯などの歯並びが原因で横顔にコンプレックスをお持ちの方は横顔が改善する可能性があります。

理想的な横顔とは?

美しい横顔の基準としてよく用いられるのが、eライン(イーライン)です。

eラインとは、エステティックラインの略称で、アメリカの歯列矯正医師であるロバート・リケッツ氏が横顔の美しさの基準として発表したものです。鼻の先から顎の先に向けて引いた線のことで、上下の唇がこの線の少し内側に入るのが美しい横顔とされています。

矯正治療を行う際にも、eラインと唇の位置関係が良くなるように歯を動かしていきます。

 

矯正治療で横顔と口元を整えるには?

矯正治療を始める際には、まず精密検査を行います。お顔の写真や横顔のレントゲンを撮らせていただき、横顔・口元のバランスや、歯と骨の位置関係などを細かく分析させていただきます。

① 分析の結果、eラインからかなり唇が出ている場合

唇の位置を後ろに下げるためには、唇の内側にある前歯を後ろに下げなくてはなりません。前歯を後ろに移動するためには、歯を抜いて矯正治療を行う必要があります。

患者さまごとに違いはありますが、抜くのは前から四番目の歯が多いです。抜いた歯の隙間を使って、前歯を後ろに下げていきます。

② eラインから唇があまり出ておらず、ガタガタも少ない場合

もともと横顔のバランスがきれいで、歯並びのガタガタも少ない方は、歯を抜かずに治療を進めていきます。

口元が出ていないのに歯を抜くと、前歯が後ろに下がりすぎてしまい、口元がeラインよりもかなり内側に入ってしまいます。そうなると、ほうれい線が深くなってしまったり、唇の張りがなくなって老けた印象になってしまう可能性があります。

横顔・口元のバランスを変えずにガタガタをなおす場合は、歯を抜くのではなく、歯を少しずつヤスリ掛けして隙間を作る方法で治療を進めることもあります。

③ eラインから唇があまり出ていないが、ガタガタが多い場合

横顔のバランスが整っている方でも、歯並びのガタガタが多い方は歯を抜いて治療を行います。

歯を抜かずにガタガタを直すと、歯はもともとの位置よりも唇側に倒れてしまいます。歯が唇側に倒れることで、治療前よりも口元が出てしまったり、顎の骨から歯の根っこが出てしまうことがあるため、そうならないように歯を抜いて隙間を作ってから歯並びを整えていく必要がでてきます。

症例紹介(歯列矯正で横顔が大きく変化した出っ歯の症例)

では、歯列矯正することによってどれだけ横顔に変化があるのか、前歯(口元)が出ていることを気にされて来院された患者さまの矯正治療前後の横顔の写真で比較してみましょう。


出っ歯を気にして来院された患者さまですが、唇の先端がeライン(写真青線)よりも前に出ており、口元が前に突き出て見えます。上下左右の前から4番目の歯(第一小臼歯)(写真✖️部分)を抜歯し、表側矯正(ワイヤー)を使用して出っ歯を改善しました。

唇側に傾斜していた前歯が正しい位置に戻ったので、唇の先端もeラインの中に収まっています。上顎の前歯を後方にさげることで唇が閉じやすくなり、キュッと引き締まった表情に変わりました。


主訴:出っ歯
診断名:上顎前突・叢生
初診時年齢・性別:22歳・男性
治療装置:表側矯正(ワイヤー)
抜歯or非抜歯:抜歯(上下左右第一小臼歯(だいいちしょうきゅうし))
治療期間:2年
費用:83万円程度(税別)
詳細はこちらをご覧ください
リスクと副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り

まとめ

矯正治療を始める際は、横顔や口元のバランスだけでなく、歯の傾きや骨の状態などを細かくみて治療方針を決めていきます。

矯正治療で横顔や口元をきれいにしたいと考えていらっしゃる方は、歯を抜く必要があるのかどうか、また、それによって治療結果がどう変わるのかなど、担当の先生にきちんと確認をしてから治療を始めることをおすすめします。