さいたま市大宮 SHIN矯正歯科 院長の矢野です。

カメラやテレビなどの 「デジタル化」は、今や私たちの日常生活の中で当たり前です。「デジタル化」とは「デジタライズ」とも言い、アナログデータをデジタルデータに変換することを意味しています。

デジタル化の波はもちろん矯正歯科業界にも来ています。今日は、矯正治療においてどのようなものがデジタル化されて変わったのか、ご紹介したいと思います。

マウスピース 型矯正装置(インビザライン )


1997年にアメリカのシリコンバレーで「アライン・テクノロジー社」によって開発され、2006年から日本での治療がスタートしたマウスピース 型矯正装置(インビザライン )は、矯正治療のデジタル化の代表例として挙げられます。

口腔内をコンピュータ上で3Dモデル化し、歯が移動していくシミュレーションを作成、その治療計画をもとに製作されたマウスピースを使用して歯並びを矯正するマウスピース型矯正装置(インビザライン) のシステムの登場は衝撃的でした。

それまでは、矯正治療前と矯正治療後の歯並びは石膏模型で確認していました。

治療前の歯型は平行模型と呼ばれる診断用の模型と、歯を1歯ずつバラバラに分割して、正しい歯並びと噛み合わせになるよう、ドクターまたは歯科技工士の手によって歯を配列し直したセットアップ模型によって、矯正治療後の歯並びをイメージして矯正治療を開始していたのです。

平行模型:模型基底面と咬合平面が平行となっていることから、平行模型という名前がつけられています。

セットアップ模型

登場から約20年、日本で治療されるようになってからは12年めのマウスピース型矯正装置(インビザライン)ですが、次に紹介するものの登場により、この数年の間にさらに劇的に進化しました。治療される患者さんにとっても、私たち術者にとっても、どんどん便利・且つ的確な治療が行えるように変化しています。

口腔内スキャナー(iTero element アイテロ エレメント)の登場


歯並びの移動を模型ではなく、コンピューター上で3Dシミュレート できることが画期的だったマウスピース型矯正装置(インビザライン)ですが、最初の口腔内の情報は従来どおり印象採得と呼ばれる、歯型を採って取得していました。

ところが2015年に開発され、日本では2017年に厚生労働省の許可が下りて使用できるようになった口腔内スキャナー(iTero element アイテロ エレメント)により、歯型がデータ化できるようになったことは、矯正歯科において、さらなる大きなデジタル化の変化と言えると思います。

口腔内スキャナー(iTero element アイテロ エレメント) については詳しくはこちらをご覧ください。

口腔内スキャナー(iTero element アイテロ エレメント) によるデジタル化は、アナログな手作業による誤差を無くし、より正確で確実な治療計画を立てることができるようになりました。そしてそのデータは、コンピュータのネットワーク上で瞬時にどこでも見ることが可能なので、治療期間の短縮や患者さんの負担軽減に繋がります。

最後に


どんなにデジタル化され便利になっても、スマートフォンの中のアプリに時計や方位磁石がデフォルトであるように、絶対に無くならないアナログなものもあります。これは矯正歯科治療にも言えることです。

人間という生き物の歯並びは機械通り・機械任せにはできません。治療開始の時点で最後のマウスピースまで出来上がっている、マウスピース型矯正装置(インビザライン)のシステムで治療を行なっていても 、定期的に経験と知識ある矯正専門のドクターによる確認(=アナログ)が必ず必要です。

今後もマウスピース型矯正装置(インビザライン)はどんどん進化してより便利になっていくと思われます。デジタル化されていく最新の技術と、従来の矯正治療専門の知識を共存させて、第一に患者さんが満足してくださる治療を心がけたいと思います。