前歯に隙間があいていると日本では「すきっ歯」と呼ばれ、あまり良くない印象を持たれがちです。
しかし、フランスでは「幸運の歯」(隙間から幸運が入ってくる)と言われていたり、アフリカでは歯と歯の真ん中に隙間があると美しいとされているそうです。
すきっ歯の見た目の印象は国によって異なりますが、前歯に隙間があることで、息が漏れるような発音になったり、かみ合わせに影響が出る場合もあります。
医学的に問題があるような場合には歯列矯正などで改善した方が良いでしょう。
目次
すきっ歯とは(医学的に)
すきっ歯には「正中離開(せいちゅうりかい)」と「空隙歯列(くうげきしれつ)」と二つの種類があります。
-正中離開(せいちゅうりかい)」
正中離開は、主に上顎の中央に位置する前歯(中切歯)2本の間に隙間がある状態を指します。
他の歯には隙間がない場合が多く「すきっ歯」として最も一般的に認識されている形態です。
-空隙歯列(くうげきしれつ)
空隙歯列は、前歯だけでなく奥歯も含めて複数の歯の間に隙間がある状態を指します。
すきっ歯になる原因はなぜ?
-歯と顎のサイズの不均衡
顎と歯のバランスが崩れることで起こりやすいすきっ歯。歯が全体的に小さく、顎が大きいと歯と歯の間に隙間ができます。
-乳歯から永久歯への移行期
乳歯が抜けて、永久歯が生えるまでの間に一時的に隙間ができることがあります。特に、前歯が抜けた後に、隙間が目立つことがあります。
-深いかみ合わせ
上の前歯が下の前歯に深くかぶさっている歯並びは、隠れた下の前歯が上の歯茎にかみこみ、そのしわ寄せで前歯が左右に開いてすきっ歯になってしまうことがあります。
-上唇小帯の異常
正中離開の多い原因として、上唇小帯(じょうしんしょうたい)が厚く、前歯の間まで伸びている場合、上顎の前歯2本の間に隙間が生じることがあります。
この場合、歯科医による手術が必要になることもありますが、軽度であれば成長とともに自然に解決することもあります。
-指しゃぶりや舌の癖
長期間にわたる指しゃぶりや、舌を前歯に押し付ける癖があると、歯並びに影響を与え、すきっ歯になることがあります。
指や舌が前歯に圧力をかけることで、歯が前に押し出され、隙間ができやすくなります。これが習慣化すると、歯の位置が固定され、すきっ歯が残ることがあります。
– 遺伝的要因
親からの遺伝的要因も、すきっ歯の原因となることがあります。両親のどちらかがすきっ歯であれば、子供にもその傾向が現れる可能性があります。
-歯の数や形態の異常
歯が生まれつき少ない(欠如歯)や、形が異常で小さい場合、隙間ができやすくなります。
すきっ歯は治したほうがいい?
-子どものすきっ歯
永久歯は乳歯よりも大きいため、通常は生え揃うと隙間がなくなることが多いです。この時期の「すきっ歯」は自然な過程であり、成長とともに改善されることが多いです。
その他、成長過程で顎が先に大きくなり、歯が追いつかない場合に隙間が生じることがあります。永久歯が生えることで隙間が埋まることが多いです。
成長期で顎の大きさが変わりつづけ、また歯の生え変わりの起こる子どものときには、すきっ歯が起こりやすい状態といえます。
-大人のすきっ歯
すきっ歯の見た目が気にならず、医学的にも特に問題がなければ治さなくても良いでしょう。しかしながら、機能的な観点からのデメリットを感じる場合は歯科矯正や補綴治療が検討する必要があります。
【すきっ歯のデメリット】
1.発音への影響
一部の音の発音が難しくなることがあります。特に、「さ行」や「た行」などの音が不明瞭になりやすいです。
歯と歯の隙間により、舌が適切に歯に触れず、発音が正確でなくなるためです。これは特に、言葉を学び始める子供や、仕事で話す機会が多い人にとって問題となることがあります。
2.食べ物が挟まりやすい
歯と歯の間に隙間があると、食事中に食べ物が歯の隙間に挟まりやすくなります。
これが続くと、歯の健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。これにより、不快感を感じたり、頻繁に歯を清掃する必要が出てきます。
3.歯の健康リスク
歯と歯の間に食べ物が残ると、それが細菌の繁殖場所となり、虫歯や歯周病の原因となります。
また、隙間が大きい場合、通常の歯ブラシでは清掃が難しく、デンタルフロスや歯間ブラシを使わないと十分に汚れを取り除けないことがあります。そのため、虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。
4.かみ合わせの問題
歯は隣り合う歯と寄り添うことで、かむときにかかる力を分散させているのですが、すきっ歯の場合隣り合う歯がないため歯が消耗しやすく、抜け落ちやすい状態にもなってしまいます。
上下の歯がしっかりとかみ合っていないと、かむ力が均等に分散されず、特定の歯や顎に負担がかかることがあり、食べ物を効率的に噛むことも難しくなり、消化不良や顎の疲れを引き起こすこともあります。
5. 歯の移動のリスク
歯は自然に動く性質があり、隙間があるとその方向に傾いたり、他の歯がずれたりすることがあります。隙間があることで歯並びがさらに悪くなり、かみ合わせがさらに悪化したり、矯正治療が必要になる場合があります。
-すきっ歯を自力で治す方法はある?
すきっ歯を自力で治すことは難しく、一般的には矯正歯科での治療が推奨されます。以下にいくつかの方法を挙げますが、これらはすきっ歯の進行を止める、あるいは予防に役立つことがある程度です。
舌の位置と姿勢の改善
舌の正しい位置を意識することで、すきっ歯の進行を防ぐことができる場合がありますが、既にあるすきっ歯を治す効果は期待できません。舌は通常、上顎の内側に触れているべきで、前歯を押さないように注意します。
指しゃぶりや癖の改善
子供の場合、指しゃぶりや舌を前歯に押し付ける癖がすきっ歯の原因となることがあります。これらの癖を早期に改善することで、すきっ歯を予防することができます。
歯列矯正が必要なすきっ歯とは
すきっ歯を短期間で手軽に治す方法として、隙間を埋めるダイレクトボンディング法やラミネートベニア、マウスピースによる部分矯正などがあります。
しかし、これらの治療法では根本的な改善には至らず、一時的に隙間が埋まったとしてもまた後戻りしてしまうすきっ歯があります。
それは、かみ合わせが深いすきっ歯です。
過蓋咬合(かがいこうごう)と呼ばれるこの歯並びのすきっ歯は、前歯の隙間だけでなく、奥歯のかみ合わせを歯列矯正で改善する必要があります。
とはいえ、すきっ歯の歯列矯正は、歯を抜かずにワイヤー矯正よりマウスピース矯正装置(インビザライン)の方が治療法として適しており、比較的、歯列矯正の中でも治療期間が短い症例が多いです。
すきっ歯が気になる方は、まずは歯科医や矯正歯科医に相談しましょう。
-すきっ歯の歯列矯正症例紹介
- 主訴:前歯の隙間が気になる
- 診断名:正中離開
- 初診時年齢・性別:26歳・男性
- 治療装置:マウスピース型矯正装置(インビザライン)
- 抜歯or非抜歯:なし
- 治療期間:1年1ヶ月
- 費用:1,012,000円程度(税込み)
- リスクと副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り