矯正治療には、すべて大人の歯に生え変わった状態で行う「成人矯正治療」と、乳歯が残っている年齢で始める「小児矯正治療」とがあります。
成人矯正治療は、大人の歯に生え変わっていれば何歳からでも始めることができますが、小児矯正治療は始めるタイミングがよくわからない方も多いのではないでしょうか。
また、子供のうちから矯正治療を始める必要があるのかどうかについて疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、お子様の矯正治療について、始める時期やその目的、メリットについてお話させていただきます。
小児矯正治療の目的
小児矯正治療は、大人の歯がきちんと生えてこられるように、顎の骨の成長を促したり、上下の顎の骨のずれをなおすことを目的に行う治療です。
成人矯正治療の場合、すでに顎の骨の成長がほとんど止まってしまっているため、その時の患者様の骨の状態に合わせて歯を並べていくことしかできません。
それに比べて、お子様の場合は顎の骨の成長が活発なため、骨の位置や形をある程度コントロールすることができ、より理想的なかみ合わせを目指すことができるというメリットがあります。
例えば、上顎の骨が前に出ている「出っ歯」のお子様では、下顎の骨を前方に成長させることで上下の骨の位置を改善し、出っ歯をなおすことができます。
また、顎の骨が小さく大人の歯が生える隙間が足りないお子様では、骨を横に大きく成長させる装置を使用して、歯が生えるための隙間づくりをしてガタガタをなおすことができます。
■小児矯正治療で使用する矯正装置
■成人矯正治療で行うこと
成人矯正治療の場合は骨の位置や形を変えることができないため、歯を抜くことで出っ歯やガタガタをなおすことが多くなります。
小児矯正治療のスタート時期
子供の矯正治療を始める時期の目安は、上下の大人の前歯と第一大臼歯(6歳臼歯)が生えているかどうかが基準になります。大人の前歯と第一大臼歯はだいたい6~7歳頃に生えてきますので、7歳頃に一度矯正歯科を受診し、小児矯正治療を受ける必要があるか専門医に判断してもらうのがおすすめです。
歯が生え変わる順番→https://www.acte-group.com/view/30
10~11歳頃になると、歯の生え変わりや骨の成長がかなり進んでしまうため、小児矯正治療ができないことがあります。その場合は大人の歯が生え揃うのを待ち、成人矯正治療を行うことになります。
お子様の歯並びが気になる方は、上下の前歯が大人の歯に生え変わる7歳あたりで、一度歯科医院にご相談いただくことをおすすめします。
小児矯正治療の注意点
顎の骨をなおすことでより良いかみ合わせを作ることができたり、歯を抜くリスクを減らすことができたりと、多くのメリットがある小児矯正治療ですが、いくつか注意点があります。
まず一つに、小児矯正治療では、乳歯と大人の歯が混在しているため、成人矯正のように全ての歯に装置をつけることができません。後から生えてくる大人の歯も含めて、全ての歯をきれいに並べるためには、小児矯正治療の後に仕上げの成人矯正治療を行う必要が出てくることがあります。
もちろん小児矯正治療のみで歯並びがきれいに整う方もいらっしゃいますが、大人の歯の生え方によっては、仕上げの成人矯正治療をおすすめすることがあります。
二つ目の注意点は、骨の成長を完全にコントロールしきれない可能性があることです。
例えば「受け口」のお子様の場合、小児矯正治療である程度骨の位置をなおしても、体の成長に合わせて下顎の骨が成長し、再び「受け口」になってしまうことがあります。その場合は、矯正治療と骨の手術を合わせた外科矯正治療が必要になることもあります。
小児矯正治療の注意点につきましては、治療の前に必ず担当医から説明があります。仕上げの成人矯正治療が必要になる可能性や、骨のコントロールのしやすさには個人差があるため、治療開始前に担当医からきちんと話を聞き、納得した上で治療を始めることをおすすめします。
まとめ
小児矯正を始める時期の目安は?
■上下の前歯が大人の歯に生え変わり、第一大臼歯(6歳臼歯)が生え始める7歳ごろ
小児矯正のメリット
■お子様の顎の骨の成長を利用して、骨の位置や形をある程度コントロールすることができ、より理想的なかみ合わせを目指すことができる
小児矯正のデメリット
■小児矯正治療の後に仕上げの成人矯正治療を行う必要が出てくることがある
■骨の成長を完全にコントロールしきれない可能性がある