こんにちは。さいたま市 大宮SHIN矯正歯科 歯科衛生士Eです。

歯の矯正治療と聞いて、皆さんが思い浮かべるのは、ブラケットという金属の金具を歯につけるワイヤー矯正と呼ばれる方法が一般的だと思います。しかし、現在、当院で多くの患者様に選ばれている矯正装置は、マウスピース型矯正装置(インビザライン)です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)とは

口腔内スキャナー(itero という機器)で歯型を3Dの画像にし、AIのシミュレーションによって作成された透明な樹脂製のマウスピース型の装置を装着し、歯を動かし歯並びを整えていく矯正方法です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)のメリットは、マウスピースの取り外しが可能なので、ワイヤー矯正に比べると歯磨きがしやすく虫歯のリスクを減らせること、透明なマウスピースを使うので装置の見た目が気にならないことです。

更に、ワイヤー矯正と比べると、歯を動かす痛みが比較的少ないという点もマウスピース型矯正装置(インビザライン)が多くの患者様に選ばれる理由です。ところが最近では、治療計画通りに治療が進まず、矯正治療へのモチベーションが低下している患者様の声を聞くようになってしまいました。

様々な種類があるマウスピース型矯正装置に関してはこのようなニュースも目にします。

https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29868

治療期間が延長する原因、マウスピースのアンフィット(不適合)について 

マウスピース型矯正装置(インビザライン)では、ただマウスピースを装着するだけではなく、患者様に毎日のマウスピースの状態を確認して使っていただくことが重要になります。マウスピースが次のような状態になっていませんか?

このようにマウスピースが正しく歯に装着されていない状態のことをアンフィット(不適合)といいます。アンフィットの部分は正しい方向に歯を動かす力が全くかかりません。

さらに、この状態でマウスピースを使い続けても、実際の歯並びとマウスピースがどんどん合わなくなっていくので、フィットするマウスピースに作り直さなければならない、ということが起こります。その結果、治療期間が延びてしまうのです。

マウスピースのアンフィット(不適合)の原因と防ぐ方法

マウスピースが合わなくなってしまう原因はいくつかあります。改善のポイントと一緒にみていきましょう。

マウスピースの指定された使用時間が守られていない

マウスピース型矯正装置(インビザライン)のマウスピースは基本的にご飲食時、歯磨きをする時を除いた1日20時間以上の使用が望ましいとされています。この使用時間を守れていない日が続くとアンフィットが起こりやすくなるので気を付けましょう。

マウスピースを装着した際にアライナーチューイをかんでいない

アライナーチューイはシリコン製の棒でマウスピースを正しい位置にはめるための補助道具です。指でマウスピースを押さえながら装着しただけでは、目には見えにくいズレが少しずつ生じ、その積み重ねがアンフィットにつながります。

そのため、マウスピースを装着した際は必ず毎回アライナーチューイを使用してください。アライナーチューイは基本的に一つの歯に対して3~5回噛むようにしましょう。

マウスピースを外す機会が頻繁にある

マウスピースを決められた使用時間(1日20時間以上)を守っていても、頻繁に付けたりはずしたりしていると、矯正の力がうまくかからずアンフィットになることがあります。できるだけ外す機会を少なくし、長時間マウスピースを付けっぱなしにしておきましょう。

歯がマウスピースにフィットしにくい形をしている

歯並びは人によって様々ですが、アンフィットが起きやすい歯の場所は特徴があります。

①側切歯(そくせっし)上の歯の真ん中の前歯の両隣の歯

真ん中の前歯に比べて小さい歯なので浮きやすいため注意が必要です。アライナーチューイをよく噛んでフィットさせましょう。

②糸切り歯や犬歯と呼ばれる真ん中の前歯から数えて三番目の歯

ガタガタが大きい歯並びや八重歯のように歯列から外れて外側に生えている歯並びはマウスピースが浮きやすく、チューイも噛みにくいのでアンフィットが起こりやすい歯並びです。

③奥歯

前歯と比べて、奥歯は見えにくいのでマウスピースが浮いていることに気づけないことが多いです。こうならないためにはマウスピースの状態をしっかり観察する必要があります。鏡を見て浮いていないか確認しましょう。

④矯正治療のために抜歯した部分の前後の歯

初期のアンフィットであれば、その部分をアライナーチューイで5~10回くらいしっかり噛んでフィットさせる、または、補助用具の装置を歯につけてゴムかけというアンフィットの改善を行う処置をします。それでも改善がみられない場合はマウスピースの再作製になってしまいます。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)の治療を確実に進めるために

初期のアンフィットであれば、その部分を集中的に(5~10回くらい)アライナーチューイをしっかり噛んだり、補助用具の装置を歯につけてゴムかけの処置を行うことで、アンフィットの状態からのリカバリーが可能です。それでも改善がみられない場合はマウスピースの再作製になってしまいます。

初期のアンフィットを見逃さないために、一日一回は鏡を見て浮いているところがないか確認することを習慣にしましょう。おすすめのタイミングは、夜、洗面所で鏡を見ながら歯を磨く時です。

アンフィットの原因と改善方法を患者様自身が理解していれば、ここが少し浮いてきているからアライナーチューイをしっかり噛もう。とか、最近マウスピースの使用時間が少なかったから明日から毎日しっかり使おう!といったように未然に防ぐことができます。

マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、正しいマウスピースの使い方ができる患者さまの協力がなければ治療をスムーズに進めることはできません。目立たず、取り外しができて、痛みも他の矯正装置と比較すると少ないとメリットの多い矯正装置ですが、マウスピースの管理を面倒に感じる方はワイヤー矯正の方が向いているかもしれません。