アデノイドとは

アデノイドとは、(鼻腔(びくう)と咽頭(いんとう)の移行部)上咽頭にある咽頭扁桃(いんとうへんとう)そのものを示す場合もあれば、咽頭扁桃が病的に肥大している状態を示す場合もあります。

咽頭扁桃の肥大は、小児期に見られることが多く、これは病原体に対する幼児期の免疫反応による生理的なものです。3~4歳頃から肥大し、5~7歳がピークになることが多いです。その後は、小さくなっていくことがほとんどですが、まれに過剰に肥大することもあります。

成長に伴い、自然に小さくなることが多いので基本的には治療をしませんが、生活に支障が出るようであれば治療(アデノイド摘出手術)を行います。アデノイドは耳鼻科にて診断・治療が可能です。

アデノイド肥大によってみられる症状

  • 鼻呼吸がしにくい⇒集中力低下・注意力散漫
  • 口呼吸によって口が乾燥し細菌が繁殖⇒口臭・虫歯・歯周病の悪化
  • 口呼吸によって顎の発達がうまく行かず、歯並びが悪くなる
  • 中耳炎
  • 副鼻腔炎、扁桃炎
  • 睡眠時無呼吸症候群、いびき

アデノイド顔貌とは

鼻呼吸ではなく口呼吸が習慣化し、ウイルスや細菌が入り込むことでアデノイドが過剰に反応&肥大すると、鼻の奥が塞がれて鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸が常態化するという悪循環が起きると考えられます。

常に、「お口ぽかん」の状態になり、口回りの筋肉も発達しません。その結果、アデノイド顔貌という顔つきになることが見られます。

アデノイド顔貌の特徴

  • 口呼吸により口が少し開いたままになる
  • 口回りの筋肉が弱まって、下顎が引っ込み出っ歯に見える
  • 鼻の下が間延びして見える
  • 首と顔の境がはっきりしなく二重顎に見える

アデノイド顔貌の治し方

アデノイド顔貌は子どもと成人でアプローチの仕方が少し異なります。

子どもの場合

子どもの場合は、顎の成長段階なので、早くから取り掛かることによって改善が期待されます。

①MFT(口腔筋機能療法)

MFTとは、舌の正しい位置を覚え、口腔周囲の筋肉を使うトレーニングです。顎の発達を促し、歯並びや噛み合わせを自然に正しい位置に導くことが期待できます。口呼吸改善にもつながります。

※成人でも、舌癖などが強い、舌位置の悪さが関係している場合はMFTを行うことがあります。

②小児矯正

【第一期治療】

5~12歳頃までの混合歯列期に行い、拡大床など専用の装置を使い顎の成長を促したり、好ましくない方向への成長を抑制したりして土台となる顎を育てます。永久歯のスペースを確保すること、第二期治療時での抜歯の回避を期待します。

【第二期治療】

12歳以降(永久歯が揃ったら)は、歯を一本一本並べるための、第二期治療を行います。成人矯正と同じ、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置(インビザライン)などから選択できます。

こどもの矯正治療について詳しくはこちら

成人の場合

既に顎の成長は終わっているため、トレーニングや装置での自然な骨の誘導は難しく、大きく顔貌を変えるのには外科処置を検討する必要があります。

①歯列矯正

ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置(インビザライン)を使った方法などで、アデノイド顔貌による歯並びの不正を整えることができます。しかし、骨格的な要素が大きい場合は、大きな変化は期待できない可能性も考えられます。

外科矯正

顎の外科手術と歯列矯正を組み合わせて行うことで、顔貌の変化を期待できます。

美容整形

顎のバランスよくする顎骨体移動治療、下顎にシリコンプロテーゼを挿入するなどがあります。

②は外科矯正対応の大学病院や歯科医院、③は形成外科や美容外科クリニックで治療していただくことになります。

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アデノイド顔貌を治すための費用

①MFT(口腔筋機能療法)

5,000円(税別)

当院では矯正治療の調整時に行なっています。基本的にMFTは保険適用外のため歯科医院によって幅があります。ただし、「口腔機能発達不全症」と診断された場合、保険診療を行なっている医院では保険適用となる場合もあります。

※「口腔機能発達不全症」の診断基準は、咀嚼機能、嚥下機能、食行動、構音機能、栄養(体格)、その他の中で二項目以上の異常がみられる場合。

②小児矯正

第一期治療:38~42万円(税別)

第二期治療:40~42万円(税別)(歯並びの程度、選択する装置の種類による)

③成人矯正

75~135万円(税別)(歯並びの程度、選択する装置の種類による)

外科矯正と美容整形は当院では行なっておりません。歯科の外科治療に関しては当院から紹介状をお出しすることは可能です。一般的な費用の目安として下記の通りです。

④外科矯正

保険適用の場合で50万~100万円(税別)(入院時の差額ベッド代などにもよる)

厚生労働省が定めた特定の症例(上顎前突、下顎前突、下顎後退、開咬、顎骨非対称等)で、かつ厚生労働省の定める指定自立支援医療機関(育成・更生医療)の条件を満たしている医療機関での治療であれば保険治療として行うことができます。

⑤美容整形

顎骨体移動治療:40~60万円(税別)

シリコンプロテーゼ挿入:30~50万円(税別)

まとめ

アデノイドの肥大自体は子供の成長過程では起こることで、必ずしも治療が必要な物ではありません。しかし、アデノイドの肥大による様々な症状の悪化がある場合は、耳鼻科にかかりながら診断・治療を行う必要もあります。

アデノイドの肥大から悪循環が起こり、口呼吸等が常態化してしまった場合は顔貌や歯並びにも影響を及ぼす恐れがあるので早めに対処ができると安心です。お子さまの場合であれば成長段階ですので、口回りの筋肉や顎の発達を促すことでアデノイド顔貌への変化を防ぐことができます。

成人の場合は顎骨の成長は終わっていますので、大きな変化を望む場合は歯列矯正と外科処置が必要になります。このとき、口呼吸や舌癖がある場合は合わせてMFTなどを行い、アレルギー症状が強くて鼻呼吸が難しい場合は耳鼻科にて治療を行うなどをしておくと、歯並びの後戻りを防ぐことにもつながります。