
「結婚式までに歯並びをきれいにしたい」
「就活や留学前に、短期間で矯正を終えたい」
そんなご相談を受けることが少なくありません。
一般的に大人の歯列矯正は 非抜歯で1年半〜2年、抜歯を伴う場合は2〜3年 かかります。
しかし、工夫次第で治療期間を短縮できる方法もあります。
本記事では、矯正治療が長い理由とリスク、期間を短くする方法、自分でできる工夫、実際の症例 をご紹介します。

目次
なぜ大人の矯正は時間がかかるのか?
矯正治療で歯が動く仕組み
歯列矯正で歯が移動する仕組みを簡単に説明します。
歯に矯正器具をつけることで継続的に歯に一定の力が加わり、歯の周りの骨と組織(歯槽骨と歯根膜)が徐々に変化し歯が移動します。
歯が移動する方向に圧力がかかる部分の骨が吸収され、逆に歯が引っ張られる方向には新しい骨が形成されます。
この、歯の周りの骨(歯槽骨)が再構築されることを「骨のリモデリング」と呼びます。
これによって歯が新しい位置に安定するのです。

歯列矯正で歯を早く動かすとどうなる?
歯に急激な力をかければ早く歯を動かすことはできますが、歯周組織に負担がかかり、強烈な痛みや不快感があるだけでなく、歯根吸収(歯の根が骨から溶け、最終的には歯が抜けてしまうこと)のリスクなど、デメリットが多いです。
これらのデメリットを避けるために矯正治療では、安全で効果的に歯が正しい位置に移動するよう、これらの力の作用と組織の変化を計画的に管理し、徐々に時間をかけて行います。
だから矯正の治療期間は長いのです。

矯正治療を早く終わらせる方法
矯正の治療期間を短くする方法が全くないわけではありません。
冒頭で述べたように、結婚式や成人式などを控えており、「限られた期間内に歯並びをどうにかしたい!」という患者さまにおすすめの矯正装置や治療期間をコントロールする方法がいくつかあります。
マウスピース矯正装置(インビザライン)とワイヤー矯正を併用する

結婚式や出産などを控えた方には、ワイヤー矯正よりマウスピース矯正装置(インビザライン)がおすすめです。
その理由は、万が一目標としていた日までに矯正治療が終わらなくても、装置を簡単に外すことができますし、つけたままでも目立ちにくいからです。
しかし矯正のために歯を抜く必要がある抜歯症例の場合、マウスピースだとワイヤーと比較して抜歯したスペースを閉じるのに時間がかかる傾向にあります。
その期間を短縮するために、マウスピース矯正装置(インビザライン)とワイヤー矯正を併用する治療方法があります。
矯正治療効果促進装置を使う


矯正治療効果促進装置とは安全に歯の移動を速め、矯正治療の効果を促進することを目的としたツールで、いくつか種類があります。
当院では歯に微細な振動を与えることで、骨のリモデリングを促進し、矯正治療効果を高めることができる矯正治療効果促進装置(Vpro)を使用しています。
矯正治療効果促進装置を用いると、より精密な治療が期待できます。マウスピースの場合、アンフィっと(マウスピースの不適合)を防止する効果があるので、スムーズな治療が期待できます。
その他、歯周組織の細胞が加速矯正装置によって活性化され治療に伴う痛みが軽減されたりといったメリットもあります。
但し、マウスピースが歯にしっかりと適合していない状態で加速矯正装置を使うと、間違った方向に治療が進んでしまい、それをリカバリーする時間が必要になり、逆に治療期間が延長してしまいます。
そのため加速矯正装置を使う場合は、新しいマウスピースを交換するたびに、患者さまにマウスピースをつけた状態のお口の写真を撮影して、医院に送信していただきます。

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自分でできる矯正治療を早く終わらせる方法
矯正治療中、普段の日常生活の中でこれらのことを気をつけるとより治療を効果的に進めることができます。
通院頻度を守る
医院から指定された通院頻度を守り、定期的に矯正装置の調整を行うことで、治療の進行をスムーズにすることができます。
インビザラインなどのマウスピース型矯正装置は、マウスピースを自分で交換すればスムーズに進んでいくと思う方がいらっしゃいますが、マウスピースを進めつつ他の処置(ゴムかけでのかみ合わせ調整など)が必要になってきます。他の処置が必要な場合、来院していただかないと処置が進められないのと、次回予約の間隔は見越してお伝えさせて頂いていますので、指定された通院頻度でご来院をお願いいたします。

お口のケアと生活習慣の改善
矯正治療中は装置の周りや、移動してできた歯と歯の間の隙間などに汚れが溜まりやすくなります。
清潔な口腔環境を保つことは、治療中の歯周病や虫歯のリスクを減らし、治療の順調な進行なために必要不可欠です。
矯正装置に適した食事を心がけることで、装置の脱離や破損による調整の必要性を減らし、治療の効率を上げることができます。
また、汚れが歯と歯の間に残っていると、隙間が閉じきれなくなってしまいます。フロスや歯間ブラシを用いて常に清潔な状態を保ちましょう。

矯正装置の正しい使い方を守る
マウスピース矯正装置(インビザライン)の場合は、1日の装着時間やチューイの使用状況が守られないと治療の効果が期待できません。
また、マウスピースを交換するのを忘れてしまうと、その分矯正治療期間が延びてしまいます。
最近では、マウスピース交換リマインダーや装着状況の記録ができる便利なアプリがあります。そういったものを活用していただくとマウスピース矯正装置の管理がしやすくなります。

加速矯正装置を使用した症例紹介
治療開始1年後の歯並びの変化
マウスピース型矯正装置(インビザライン)と矯正治療効果装置を併用した治療を開始して約1年で、出っ歯だった歯並びが内側に変化していることがわかります。
自然に口が閉じられないという症状も改善され、笑ったときに手で口元を隠すくせもなくなりました。



歯列矯正を始めて1年で、出っ歯の見た目はだいぶ改善されましたが、治療はまだ終わりではありません。今後は奥歯のかみ合わせの調整を行なっていきます。
前から見たら綺麗な歯並びですが、奥歯のかみ合わせが正しい位置でかんでいません。
この状態で治療をやめてしまうと、結局、以前の歯並びに戻りやすくなったり歯肉退縮など何らかの弊害がおこりやすくなります。

- 【症例詳細】
- 主訴:出っ歯が気になる、口元が出ている
- 診断名:上顎前突(じょうがくぜんとつ)
- 初診時年齢:22歳
- 装置名:マウスピース矯正装置(インビザライン)・加速矯正装置
- 抜歯箇所:なし
- 費用の目安:96万円(税別)
- リスク・副作用:痛み、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、後戻り
このように、矯正の治療期間は2年前後かかりますが、前歯の人から見えるわかりやすい部分の歯並びは1年ほどで大きく変化する方がほとんどです。
とはいえ、歯並びが皆違うように治療方法も人によって異なります。1年以内で結婚式や成人式などを控えていて、なるべく早く歯並びを綺麗にしたい!という方はぜひ歯科医院に相談にいきましょう。
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