歯の矯正治療中に妊娠こんな時どうする?

20~30代の女性の患者さまにとって、歯列矯正は、歯を動かす期間が約2〜2年半、さらに後戻り防止のための保定期間が2年と、治療期間が長いので、妊娠や出産の時期と重なる可能性が高くなります。

-つわりで気持ち悪くてマウスピースを使えない

最近、”長い間不明とされていた原因が解明された”とニュースになっていた”悪阻(つわり)”。症状はひとそれぞれですが、妊娠すると多くの女性が悪阻で吐き気などを経験します。

悪阻で、お口の中のワイヤーなどの矯正器具が我慢できない場合は、装置を外して治療を中断をします。マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、簡単に取り外しできますので、気持ち悪い時はご自身で外してくださって大丈夫です。

しかし、ワイヤー矯正を中断したり、マウスピースを外した状態が長く続くとそれまで動かしてきた歯は多少後戻りします。

治療期間は延長してしまいますが、中断している間のブランクは後から取り戻せます。妊娠中の母体の健康を一番に考えますので、状況が落ち着いてから治療を再開しましょう。

-里帰り出産するのでしばらく通院できなくなる

マウスピース型矯正装置(インビザライン)であれば、治療のペースを遅くすることができます。例えば、1週間ごとに交換していたマウスピースを、1ヶ月交換にします。

ワイヤー矯正の場合は、1ヶ月以上通院できないと、治療をストップすることになります。装置の周りに汚れが溜まりやすくなりますので、歯磨きを頑張りましょう。

これから歯列矯正を始める方で、妊娠する可能性がある方には、簡単に一時的に治療を休止することができるのでマウスピース型矯正装置(インビザライン )をおすすめしています。

妊娠すると起こるお口の中の変化

妊娠中の口の中は、エストロゲン(女性ホルモン)が増加し血液中に放出される影響によって、口内環境が変わります。

-唾液がネバネバする

妊娠すると、唾液の分泌量が減り、ネバネバする特徴があります。唾液がサラサラでないということは、口腔内の自浄作用が低下します。

つわりの影響や間食や食事の回数が増えるなど食生活の変化で、虫歯になる危険性が高くなります。

-歯肉炎や歯周病になりやすい

妊娠中のホルモンバランスの変化によって起こる歯肉炎を”妊娠性歯肉炎”と呼びます。症状は普通の歯肉炎と同じで、歯肉炎は歯周病の初期段階で歯茎(歯肉)にのみ炎症が起きていることをいいます。

しかし、妊娠中に中〜重度の歯周病にかかると、陣痛を起こすプロスタグランジンの分泌を促成させるため、多くの研究から胎児に「低体重」や「早産」といった影響を及ぼし、喫煙やアルコール摂取よりも危険と言われています。

歯列矯正中に妊娠したら気をつけること

-口の中を清潔にする

矯正治療中は、妊娠していなくても、むし歯や歯周病になりやすい環境です。そのため、妊娠中に歯列矯正をする場合は、よりお口の中を清潔にしておくことが大切です。

歯科の妊婦健診は必ず受けましょう。つわりがひどい時は難しいかもしれませんが、なるべく日々のホームケアも念入りに行ってください。体調の良い時に、歯科医院でクリーニングや歯石取りなどをしておくと良いでしょう。

また、むし歯菌はお母さんから赤ちゃんにうつると言われています、生まれてくる赤ちゃんのために、妊娠中は通常時にも増して、口の中を清潔に保つことが推奨されています。

-レントゲンの撮影は控える

歯科用のレントゲン撮影で浴びる放射線量は日常生活の中で、自然環境から浴びる放射線量よりも少なく、お腹から離れている歯の部分を撮影するだけなので赤ちゃんへの影響は少ないとされていますが、当院では妊娠中であるとわかった患者さまのレントゲンは撮影していません。

-分娩時はマウスピースを外す

お産の経過によっては、分娩時に急きょ全身麻酔を行う場合があります。お口の中に装置が入っていると気道を確保する際に危険ですので、産気づいたらマウスピース矯正装置(アライナー)は外しましょう。

出産前後の通院について

出産前後は、里帰り出産しない方でも矯正の通院をお休みして、体調が回復してきたら再開するようにしましょう。臨月の外出は慎重になりますし、産後1ヶ月間は母子共に外出は極力控えるように、と言われています。

産後も無理のないペースで矯正治療を進めていけるよう、歯科医師と衛生士でサポートさせていただきます。安心して出産に臨んでくださいね。