
歯の矯正治療中に妊娠!こんな時どうする?
歯列矯正は、歯を動かす期間が約2年〜2年半、さらに後戻り防止のための保定期間が2年と、一般的に治療期間が長いものです。
特に女性の患者さまは、「矯正中に妊娠や出産が重なったらどうしたらいいの?」「現在妊娠中だけど、矯正できるの?」と、不安に感じられている方もいらっしゃると思います。
今回の記事では、安心して矯正治療を進めていくために、妊娠中の矯正で気を付けることや、お口の中の変化などをお伝えしていきます。
目次
矯正治療中に妊娠したら起こりうること
つわりで気持ち悪くてマウスピースを使えない

最近、”長い間不明とされていた原因が解明された”とニュースになっていた”つわり”。症状はひとそれぞれですが、妊娠すると多くの女性がつわりで吐き気などを経験します。
つわりでお口の中の矯正器具が気持ち悪いなど、我慢できない場合、ワイヤー矯正の場合は装置を外して一度治療を中断する必要があります。マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、簡単に取り外しできますので、気持ち悪い時はご自身で外してしまって大丈夫です。
しかし、ワイヤーを外して治療を中断したり、マウスピースを使えていない状態が長く続くとそれまで動かしてきた歯が後戻りしてきてしまいますので注意が必要です。 こういった場合、治療期間は延長してしまいますが、中断している間のブランクは後から取り戻せます。妊娠中は、お母さんと赤ちゃんの安全が一番です。治療を続けることが負担に感じる場合は無理をせず、落ち着いてから再開するのがいいでしょう。
里帰り出産するのでしばらく通院できなくなる
ワイヤー矯正、インビザライン矯正それぞれ通院頻度と治療の進め方が異なります。
【ワイヤー矯正の場合】
通常1ヶ月に1回ご来院いただき、医院にてワイヤー等の調整をして治療を進めていきます。ご自身では取り外しや調整ができないため、1ヶ月以上通院ができない場合は治療を進めることができず、その間は治療がストップすることになります。
【インビザライン矯正の場合】
通院自体は1ヶ月~3ヵ月に1回で、その間ご自身でマウスピースを交換していただくことで治療を進めていきます。交換のペースを調整することで、通院のペースも調整できます。例えば、1週間ごとに交換していたマウスピースを1ヶ月交換にすることで、通院頻度を通常よりも落とすことができます。
これから歯列矯正を始める方で、妊娠の可能性がある方には、通院頻度や使用日数をコントロールできるインビザライン(マウスピース型装置)をおすすめしています。

妊娠すると起こるお口の中の変化
妊娠中のお口の中は、エストロゲン(女性ホルモン)が増加し血液中に放出される影響によって、口内環境が変わります。
唾液がネバネバする
妊娠すると、唾液の分泌量が減り、ネバネバする特徴があります。サラサラな唾液にはお口の中を洗い流す自浄作用がありますが、ネバネバな唾液にはそれがないため、つわりの影響や食生活の変化などと併せて虫歯になるリスクが高くなります。
歯肉炎や歯周病になりやすい
妊娠中のホルモンバランスの変化によって起こる歯肉炎を”妊娠性歯肉炎”と呼びます。症状は普通の歯肉炎と同じで、歯周病の初期段階で歯茎(歯肉)にのみ炎症が起きていることをいいます。
妊娠中に歯周病が中~重度に進行してしまうと、陣痛を起こすプロスタグランジンの分泌が促進され、胎児に「低体重」や「早産」といった影響を及ぼすことが多くの研究で分かっており、喫煙やアルコール摂取よりも危険と言われています。

歯列矯正中に妊娠したら気をつけること
口の中を清潔にする
矯正治療中は、年齢性別に関わらずむし歯や歯周病になりやすい環境です。更に妊娠中となると、上で述べたようにむし歯や歯周病のリスクがより通常より高まるため、口内の環境を整えることが大切です。
日々のセルフケアに加えて、定期的に歯科医院での検診やクリーニングに行くのがおすすめです。お住まいの地域の妊婦歯科検診を利用するのもよいでしょう。
つわりがひどい時は難しいかもしれませんが、トラブルを避けるためになるべく口の中を清潔に保つように心掛けましょう。

レントゲンの撮影は控える
歯科用のレントゲン撮影で浴びる放射線量は、日常生活の中で自然環境から浴びる放射線量よりも少ないとされています。また、お腹から離れている歯の部分を撮影するだけなので赤ちゃんへの影響も少ないとされていますが、当院では妊娠中の患者さまのレントゲン撮影はしていません。

分娩時はマウスピースを外す
矯正装置が付いたままでも一般的な分娩は問題ないとされています。しかし、マウスピース型装置の場合だと分娩時の噛み締めにより装置が破損したり、緊急帝王切開などで急遽全身麻酔が必要になった際、気道を確保するのに邪魔になりますので、産気づいたらマウスピースは外しておきましょう。

出産前後の通院について
出産前後は矯正の通院をお休みして、出産後体調が回復してきたら再開するようにしましょう。臨月の外出は慎重になりますし、産後1ヶ月間は母子共に外出は極力控えるように、とも言われています。もちろん、通院をお休みしている間でも、不安な事があったらお気軽にご連絡ください。
妊娠中や出産後も無理のないペースで矯正治療を進めていけるよう、スタッフ一同サポートしていきます。安心して出産に臨んでくださいね。
