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【口呼吸はなぜ起こる?】
人間(ヒト)の健康で効果的な呼吸方法は鼻から息を吸い込む鼻呼吸です。しかし、特定の状況下や健康上の理由によって、鼻を使わず口から息を吸い込む口呼吸が行われることがあります。
①鼻のトラブルによる口呼吸
風邪や花粉症、ハウスダスト等によるアレルギー性鼻炎の症状による鼻水や鼻づまり、鼻の中にできもの(鼻腔にポリープ(粘膜の腫れ物))があると鼻からの呼吸が難しく、口呼吸になってしまいます。
②顔の骨格的な問題による口呼吸
鼻中隔湾曲症(鼻の穴を左右に隔てている壁の彎曲)や狭窄歯列弓(上顎や下顎の歯列弓の幅が非常に狭い状態)の場合、鼻からの呼吸が妨げられ、口呼吸が起こることがあります。
③歯並びによる口呼吸
出っ歯や受け口、開咬といった不正咬合は、口を閉じた状態でも唇の接触が不十分になることが多く、これらの歯並びにより、鼻呼吸が制限され、口呼吸をする傾向が高まることがあります。
④口周りの筋力の低下による口呼吸
口輪筋(口周りの筋肉)や舌筋が低下していると、お口がポカンと開いている状態になりやすく、口呼吸を誘発します。
本来、口輪筋の衰えは老化現象でした。しかし、昨今のマスク生活や長時間のスマホやゲームによる姿勢、食生活の変化で年齢を問わず筋力が低下して、口呼吸の人が増えています。
【口呼吸のデメリット】
口呼吸は一時的な場合もありますが、長期間にわたって口呼吸が続き、鼻呼吸をしなくなると、健康問題のリスクを高める可能性があります。口呼吸のデメリットは次のようなものがあります。
- 【口および歯の問題】
- ・虫歯・歯周病
- ・ドライマウス
- ・歯の後戻り
口呼吸の場合、虫歯や歯周病にかかるリスクが高くなります。なぜなら、お口がポカンと開いた状態の口呼吸の人の口内は乾燥しやすく、これをドライマウスといい口臭にも影響します。口の中だけでなく唇の乾燥やひび割れも起こりやすくなります。
また、慢性化した口呼吸は、歯列矯正の治療を行っても良い結果が得られなかったり、歯並びが改善されてもすぐに後戻りする可能性が高くなります。
- 【健康問題の増加リスク】
- ・風邪をひきやすい
- ・気管支炎・感染症のリスク
- ・睡眠時無呼吸症候群
鼻呼吸と比較すると、口呼吸は風邪をひきやすい傾向にあります。鼻から吸った空気は鼻腔というフィルターを通して肺に送り込まれます。鼻腔は細菌やウイルスを除去したり、空気の加温・加湿を行うなど空気清浄機のような役割があります。
しかし、口呼吸の場合は鼻腔を通らず直接肺に空気が送り込まれるため、鼻腔が果たす作用が期待できません。そのため、気管支炎、感染症のリスクが増加します。
他にも、口呼吸は寝ている時も口が開いているため睡眠の質を低下させます。睡眠時無呼吸症候群の原因となることもあります。
口を開けたままの口呼吸の人は、口呼吸特有の特徴的な顔つき(アデノイド顔貌)になりやすい傾向があります。
- 【顔貌の変化】
- ・お口がポカンとあいている面長の顔つき
- ・口周りの筋力の低下により口角が下がった口元
- ・下顎が後退しており、横顔が平坦な印象
これらの口呼吸の人の顔の特徴は一般的な傾向であり、全ての口呼吸の人に必ずしも当てはまるわけではありません。
しかし、口呼吸が続く場合は専門の医療機関を受診して、適切な治療や対策を通じて、鼻呼吸を促進することが重要です。
【口呼吸の治し方】
口呼吸を治すための改善方法や対処策についてお伝えします。
①耳鼻科にかかる
口呼吸の原因となる要素が、鼻づまりや鼻中隔湾曲症など鼻由来の場合は鼻の通気性や健康状態について耳鼻科の医師と相談することをおすすめします。
②歯列矯正をする
狭窄歯列弓や出っ歯・開咬・受け口などの歯並びの異常が、鼻呼吸を制限し口呼吸を促す要因となっている場合、歯列を拡大し、矯正装置を使って歯並びを改善することで口呼吸の症状の改善につながる可能性があります。
③口周りの筋力トレーニング(口腔筋機能療法MFT)を行う
口腔筋機能療法とは、舌や口周りの筋肉を強化して、口呼吸を抑制し、正しいかみ合わせに誘導するためのお顔のトレーニング方法です。
Oral(口腔)MyoFunctional(筋機能)Therapy(療法)の頭文字をとってMFT(エムエフティー)と呼ばれています。
口腔筋機能療法(MFT)について詳しくはこちら
【口呼吸を効率よく治すには】
鼻の通りが悪い、アレルギー、口や顎の形態や筋力の低下、歯並びなど、口呼吸にはさまざまな原因があるため、口呼吸の治し方は個人によって異なります。
一般的なアドバイスや方法を試してみてもよいかもしれませんが、歯科や耳鼻科にかかり、専門の医師に相談・診断によって正しい原因を理解してから、自分に合った口呼吸の治療法を選択しましょう。
当院では、歯並びが口呼吸に関与している場合、矯正治療と口腔筋機能療法(MFT)を併用して治療を行います。口呼吸を治し、正しい呼吸法を身につけ鼻呼吸を習慣化してもらうことで、歯列矯正のより良い効果を得ることが可能になり、また、歯の後戻りも防ぐことができます。