近年、舌磨きが口腔ケアの一環として注目されています。舌磨きが重要視される理由は、舌に細菌や食べ物の残留物が溜まりやすく、それが口臭や味覚に影響を及ぼす可能性があるためです。

舌苔(ぜったい)とは?

舌の汚れのことを、専門用語で舌苔(ぜったい)と言います。舌の表面に付着する白っぽい、または黄色がかった苔状のものを指し、皮膚での垢のようなものです。

舌は糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と呼ばれる多くの小さな凸凹があり、その隙間に汚れが溜まりやすい構造をしています。

-舌苔の原因

舌苔は複数の要素が重なり合って発生します。舌の表面は絶えず新陳代謝が行われ、古い細胞や粘膜が剥がれ落ちています。

それらの汚れは、唾液によって流されますが、口内が乾燥すると唾液による自浄作用が弱まります。そして、その古い細胞や食べ物の残りカスなどが口内の常在菌と結びつき、舌苔が形成されます。

-舌苔とタンパク質との関係

舌苔の形成には、タンパク質が深く関わっています。

口内の常在菌の中には、タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)を持つものがあります。

日常の食事から摂取する、肉、魚、卵、乳製品などのタンパク質が口腔内に残っていると、これらの細菌が舌の上のタンパク質を分解することで、硫黄化合物などの揮発性成分が生成され、口臭の原因となり、この過程で舌苔が蓄積します。

また、唾液には本来、口腔内の細菌やタンパク質を分解・洗い流す役割があります。しかし、唾液の量が減少したり、口腔の乾燥が起こると、舌の表面にタンパク質が蓄積しやすくなり、舌苔の形成が進みます。

舌の汚れを取り除く正しい方法

舌苔が厚くなると菌の温床となり、口臭や味覚障害だけでなく、感染症や全身の健康リスクが高まることもあるため、舌は適度に清掃する必要があります。

舌の汚れを取らない方が良い?

ただし、間違った方法で舌磨きを行うと、かえって口臭が強くなる可能性があります。そのため、適切な頻度と方法でケアを行うことが重要です。

①舌磨きは1日1回

舌磨きの頻度は、一般的に1日1回が適切とされています。朝、歯磨きと一緒に舌磨きを行うのが効果的です。これは、舌の表面に夜の間に細菌や食べ物の残留物、死んだ細胞が蓄積しやすいため、朝の口腔ケアの一環として舌磨きを行うと良いからです。

②舌は優しくみがく

舌磨き専用の舌ブラシやタングクリーナーを使用し、優しく磨くことが大切です。

過剰に舌の汚れを取ろうと、硬いブラシでゴシゴシと強くこすると、かえって舌の表面を傷つけ逆効果です。

舌に優しくケアできる柔らかい素材もの、または、シリコン製のブラシがついていないものがコスパがよくておすすめです。

舌の奥から手前に向かって軽くこすり、過度に力を入れないようにします。磨いて汚れが付いたブラシは、その都度水で洗いましょう。汚れの付いたままのブラシで磨くと逆効果です。

最後に口をゆすぐときは、マウスウォッシュを併用するとより効果的です。

-嘔吐反射が起こりにくい舌磨きの方法

嘔吐反射が起きやすい人は、舌磨きの際に奥までブラシを入れすぎないことが重要です。

磨く際は舌の手前部分から始め、少しずつ奥に進むようにします。また、舌を前に出して磨くと、嘔吐反射が軽減されることがあります。

鼻呼吸を意識すると少し楽になります。リラックスして深呼吸を行いながらケアすることも効果的です。

舌に汚れが溜まりやすい人とは?

歯磨きをあまりしない人はもちろんのこと、口の中が乾燥していて口腔内の自浄作用が弱くなっている人が舌苔が溜まりやすい人の特徴です。

-歯の矯正中は舌苔がつきやすい!?

歯並びが原因で口呼吸になっている人は歯列矯正が有効ですが、歯の矯正治療中も器具が口内に干渉しやすく、ドライマウスになりやすい傾向があります。舌の汚れ(舌苔)が気になる方も多いのではないでしょうか。

歯列矯正中は、常に矯正器具があることで口内環境が大きく変化し、歯磨きが難しくなりますが、口内を清潔に保つことが大切です。正しい舌磨きと日々のケアを心がけ、健康な口内と爽やかな息を保ちましょう。

舌苔をつきにくくするには

まず、バランスの取れた食生活を送り、よく寝て規則正しい生活を送ることが大切です。

食後にはしっかり歯磨きを行い、お口の中にタンパク質が残らないようにします。そして、舌ブラシや専用の道具で優しく舌を磨き、舌苔を取り除きます。


-舌苔が取れやすくなる食べ物

タンパク質だけでなくアルコールやコーヒーも利尿作用が強く口の中を乾燥させやすく、舌苔を増加させる食べ物です。

口臭が気になるけれど、これらの食品を摂る機会が多い人は舌苔が取れやすくなる食べ物も併せて食べてみても良いかもしれません。

リンゴ、セロリ、ニンジンなどの生野菜やフルーツは、食物繊維が豊富で、噛む動作によって唾液の分泌を促し、舌の上に残る食べかすや細菌を減らす効果が期待できます。

唾液の分泌を活性化する梅干しやレモンなど酸味のある食品、緑茶や蜂蜜などの抗菌・抗酸化作用がある食品も、口内の細菌の増殖を抑える効果がありおすすめです。

舌は血流、消化器官、体内の水分や栄養状態、感染症など、さまざまな体の状態を反映するため、体調を確認する簡単で効果的な方法として「健康のバロメーター」とされています。

舌磨きを毎朝行うことで舌の状態を日常的に確認できるので、口臭予防だけでなく健康管理や体調の変化に気付くこともできます。